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2024.06.03 インタビュー

【インタビュー】林業5年目|(一社)奏林舎 谷川さんの想い「林業は次の世代にバトンをつなぐ仕事」

愛知県岡崎市に拠点を置く一般社団法人奏林舎は、地域に根差した豊かな森づくりを通じて、山里と流域全体の持続的発展に貢献することを理念に活動している会社です。社名の「奏」には、豊かな森づくりを通じて活気に満ちた地域にしていきたいという思いが込められています。今回は、奏林舎のメンバーの一人である、入社5年目の谷川さんに林業との出会いから今後の展望まで、詳しくお話を伺いました。

 

気さくで面白い少数精鋭のチーム、すぐに興味を惹かれた

――谷川さんは、自動車業界から転職されたそうですね。林業へ興味を持ったきっかけは、なんですか。

谷川さん(以下、谷川):以前は、大手企業で自動車を作っていました。仕事は楽しかったのですが、精を出しすぎて体調を崩していた時に、会社の産業医から林業を勧められたのがきっかけです。その後、自身で林業の説明会を調べ、市が主催する「林業ガイダンス」に参加しました。

――「林業ガイダンス」で奏林舎さんを知ったのですか。

谷川:ガイダンスの本を拝見した際、3人しかいない会社を見つけました。以前、大企業に属していた私からすると最小単位で経営されている点にすぐに興味を持ち、お話を伺いにいったのが最初です。そこでお話ししたのが、現在務める奏林舎の創業者 唐澤 晋平でした。気さくに何でも話せて、親身に相談に乗ってくださったのを覚えています。そして、他の2名は、とにかく面白かったのを覚えています。そこでのやり取りをきっかけに、奏林舎で働くことを決めました。

<尊敬する仲間の作業の様子>

林業は次の世代にバトンをつなぐ仕事

――他業界も経験された谷川さんから見て、林業の魅力はなんですか。

谷川:一言でいうと、多様性ですね。林業に携わる方は、様々な経験をされ色んな知識を持たれた方が多く、本当に個性豊かです。まるで植物みたいですね(笑)。日々、そんな林業の仲間たちから刺激をもらえる環境があります。

そして、仕事自体、つまり自然の中で働くことがリフレッシュになりますし、四季折々の変化を肌で感じられます。林業の特徴としては、長期的な視点で仕事に取り組むことが求められますが、その過程を楽しむ・楽しめることが林業の醍醐味ですね。私の場合、入社した頃に作業した山へ5年経った今行くと、山の様子が少し変わっているんです。そのちょっとした変化が面白いですね。林業は、次の世代にバトンを繋いでいるように感じる仕事です。

――業界未経験での就職は、怖くなかったですか。

谷川:不思議と怖くはなかったですね(笑)奏林舎の人と林業ガイダンスで直接話せていたことが大きかったのかもしれません。未経験でしたので、道具も知識も何もない状態で入社しました。

――そうなんですね!道具はご自身で揃えられたのですか。

谷川:会社からほぼ全て支給していただきました。細かく言うと、チェーンソーとヘルメットとかですね。こんなに支給していただけるとは思わず、家のどこにしまうか迷ったぐらいです(笑)作業着も支給していただいています。

――知識面はどのようにカバーされたのですか。

谷川:知識は、入社してから定期的、能力別に研修が組まれているため心配はいりません。実際私も、林業の基礎から応用までを幅広く学ぶ研修を受けました。研修は、山林の管理方法、伐採技術、環境保全の知識などを網羅しており、特に実践的なスキル習得に重点が置かれているため、聞いて終わりという一方的な学びとは異なり、実際に道具を使いながら学んでいきます。

<間伐作業中の谷川さん>

自然相手の仕事は、毎日が新しい発見と学びの連続

――現在の谷川さんの仕事内容について教えてください。

谷川:仕事は私自身も驚くほど多岐にわたります。例えば、間伐、作業道の整備、薪の生産などの業務を行っています。天気によって仕事は変えていて、例えば雨の日には薪の生産に集中し、安全を考慮して配達を控えたりと柔軟に対応しています。

天気で仕事が左右されることもありますが、自然と直接向き合うことで「いいことをしている」という実感を得られ、日々の励みとなっています。林業は一つとして同じ木がないため、毎日が新しい発見と学びの連続ですね。

<生産した薪がズラリと並ぶ>

――多岐にわたる仕事の中でおおよその1日の流れについて教えてください。

谷川:大体はこんな流れで活動しています。

・6時半に家を出る(通勤:1時間)

・8時から現場スタート

・10時から10分休憩

・12時からお昼休憩

・13時から現場再開

・15時から10分休憩

・17時に終了

山が暗くなったら危ないので、冬場はお昼休憩を30分にして16時半には切り上げています。逆に夏の暑い時期には、開始時間を早める対応をするなど柔軟な働き方をしています。少数のチームだからこそ、色々試しながら一番ベストな形を皆んなで探しています。

――季節に合わせた柔軟な働き方ですね!ちなみに、休日とのバランスは取れていますか。

谷川:会社は、カレンダー通りで毎週土曜日と日曜日、祝日はお休みです。加えて、長期休暇が夏と冬にあります。私は、林業を始めてから山がさらに好きになり、連休中も1回ぐらい現場とは関係ない山に行ってしまうほどです(笑)

<谷川さんにとって山林は職場、そして憩いの場>

林業は地域社会の一部であり、人々の生活を支える重要な役割

――谷川さんにとっての仕事のやりがいを教えてください。

谷川:前職の自動車業界では顧客との直接的なコミュニケーションが少なく、感謝の言葉を受ける機会も限られていました。しかし、林業に転職してからは、地域住民の顔が見れて、感謝の言葉を直接受けることが多くなりました。例えば、地域住民が高齢化し、管理しきれない山林の手入れをした時は、その地域に住んでいる方々から直接感謝の言葉をいただきました。仕事を通じて、地域の環境保全や住民の生活改善に貢献できることは誇りに思っています。

また、林業は自然相手の仕事であり、手を入れることで自然がどのように変化するかを見届けることができるため、非常にやりがいを感じます。同時に、林業にはまだまだ伸びしろが沢山あるとも感じています。

――逆に仕事を通してネガティブな面はありませんか。

谷川:そうですね…色んな仕事をする割に業界全体として人手が不足しているので、トラックを運転しなければいけないことが私としては苦手ですね。

ただそれ以上に、人間本来の生活、外が明るくなったら起きて暗くなったら家に帰って寝るといった生活リズムは、心身をとても豊かにしてくれます。同じ事を繰り返す仕事がほとんどないので、人間側に工夫することが求められます。一般的に、「人生を旅」と表現することがありますが、まさに林業も落ち込んでいる暇がなく、色んなチャンスに挑戦できる環境に溢れているため、人生のゲームをクリアしていくような感覚で日々過ごしています。

――今後の展望を教えてください。

谷川:林業は単なる産業ではなく、安全で住みやすい環境作りや環境保全といった地域社会の一部であり、人々の生活を支える重要な役割を果たすものです。それぞれの地域に根ざした林業を推進し、新しい技術や知識を柔軟に取り入れながら、持続可能な環境づくりに貢献していきたいです。自然と共生しながら、地域社会に貢献する林業を目指しています。

――最後に、新しく林業に参入する方や、これから入社される方へメッセージをお願いします。

谷川:まずは「林業を楽しむこと」が大切です。そして、一緒に学んでいく姿勢を持って仕事に取り組んで欲しいです。私たち先輩もサポートを惜しまず、新しい仲間となる皆さんと一緒に林業の未来を作っていきたいです。共に学びながら成長していく、そんな環境を一緒に作りましょう。一緒に働ける日を楽しみにしています!

 

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