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【インタビュー】林業10年目|㈱茂木林業 茂木社長の想い「山を守り、働く人の暮らしを守る」
今まさに新しくスタートを切った第二の林業人生への挑戦に、日々忙しく奮闘中です。茂木林業で働く魅力は何といっても【これから会社を一緒に創っていく一員となれること】。「林業だからこそ20代での起業が叶った。地域の雇用を守ることで社会貢献をしたい。」そう語る茂木さんにこれまでの林業経験やこれから描く会社の未来についてお話を伺いました。
地元の人が地元で働ける、そんな環境をつくりたい
――茂木さんは今年(2024年)会社を設立されたばかりですね。
茂木林業では今後どのような事業をやっていく予定か教えてください。
茂木 魁都さん(以下茂木):「これに特化」という会社ではなく、最初の切るところから植えて育てるところまで、林業の全部をやっていける会社にしたいですね。
というのも現状、この地域は間伐とか択伐(※木を伐採する方法の一種)でずっとやっているんです。1 年間の植栽(※木を植える)面積が1ヘクタールもない、本当に微々たるもので。
林業って通常は1年のサイクルで動くじゃないですか。でもこの地域は木を切るところからしかやらないから、秋冬にしか仕事がないんです。夏の仕事を食いつなげないから林業会社自体も少なくて。
だからそれを何とか山の仕事だけで1年中やれるようにしたいですね。 会社としても年間通じて仕事があるっていうのは大きいですし、地域としても山で働ける会社に就職できるっていうのは大事だと思います。地元の人が地元で働けて、よそから人も呼び込める状態にしたいですね。
そういう意味でも、ちゃんと林業をやっていく会社にしたいなっていうの は一つありますね。
――素敵な考えですね。実現していけるような戦略は何かおありでしょうか?
茂木:今一つ考えているのが、地元の信用金庫と協力してやっていくことですね。
昔からこの地域は材木で潤ってた地域で。信用金庫も、材木屋と繊維業の人が中心となって創ったという歴史があるので、銀行側にも「また林業に力を入れていきたい」っていう想いがあるんです。それが僕の気持ちともマッチしていて。
今需要としても、SDGs が流行ってから「企業の森を やりたい」という方がすごく増えているんですね。この地域だと都内で働いてる方でも電車1本で来れるので、「どうしてもこの辺りでやりたい」というお話をよくいただいていて。埼玉は林業会社が少ないので、実際今仕事が増えてますし、今後もさらに増えていくと思いますね。そこを上手く活用できたらなと。
銀行・弊社・そして他のいろんな業種の企業が、お互いのやりたいことのために上手に協力して、林業の新しい可能性を模索して作っていく感じですね。
間伐・択伐だけでなく、そういった企業の需要に合わせて我々が森林管理やイベントの開催を行えば、年間で仕事ができると考えていて。林業だけで稼げるようになるかなと。この地域ならではの強み、「都会に近い」という武器はどんどん活かしていきたいですね。
――すごく面白そうですね。
【一緒に創っていける】って働き方としても魅力だと思います。
茂木:ありがとうございます。
実は今ちょうど、飯能市内の20代から40代くらいで「若手の会」みたいなものがあって。
地域全体として盛り上げていこうという動きがあるんですよね。
いろんな業種・企業の方が参加してるんです。
その中の一つとして「地域の林業 も変えなくちゃいけないよね」 ということでプロジェクトが動いてて。
元々この地域の木は「西川材」という良質なブランド木で単価も良いんです。
でも現状としては原木市場に選別機 もない状態で。みんな手で一個一個検知して並べて、整理が追いつかない。
だから市場を大きくして仕組みを作ってやっていこうと話しているところで。
地域ぐるみだから結構大きな話なんですが、うまくいけば面白いと思ってます。
話で終わらせない。だから今いろんな人が動き始めてますね。
地域全体が面白く盛り上がり始めているプロジェクトに、最初から携われるのも弊社で働く魅力かなと思います。地域おこしをみんなで一緒に創っていけるって。
自然相手だからこそできる柔軟な働き方を
――次に御社での労働環境について具体的にお伺いします。
1日の仕事の流れはどのように想定していますか?
茂木:基本的には求人情報に載せた流れ(7時30分から17時)にと思っていますが、現場の判断で臨機応変にやっていきたいですね。たとえば今日は暑いから15時に帰ろうとか。
自然が相手だからこそできる、時間に縛られない柔軟な働き方ができればと思っています。あまり時間に縛られると「17時まで過ごすためにどうするか」ってなっちゃう。そういうのは嫌だなと思っているので。
――それはおっしゃる通りですね。雨の日など現場に行けない日はどうされる予定ですか?
茂木:機械の整備等があれば、 そういうのだったりとか。
あとはまだ 計画段階 なんですが、「森林教育」 事業をやっていきたいなと思っています。
小中学校向けに環境教育とかですね。伐採で生まれた輪切りを配って森林に触れてもらう機会を作ったりして。
現場に行けない日はそういった会社の中でできることをする感じですね。
ただ無理に出社する必要はなくて、暇な時は普通に休みにもします。
――休日は土日ですか?
茂木:時期にもよりますが、この時期は最低でも土日は休みで、休みが増えることはあっても減ることはないですね。
現場の状況等でもし土曜に出勤したら、振替休日にして。
柔軟な対応をしていければと思います。
――入社したときに必要な道具は?
茂木:最初は弊社で用意する方向で考えています。
道具を揃えると初期費用が結構かかるので大変なんですよね。
だからそれがネックとならないようにと思っています。
未経験の方はやる気だけ持ってきてもらえれば(笑)
機械を既に持っている方に対しては、機械手当をつけようかなと。
修理等で毎回お金がかかりますしね。
車に関しては社用車で軽トラなどを用意しているので、個人で用意していただく必要はありません。基本的には事務所に集合して、社用車でみんなで現場に向かう感じですね。
長い歴史を肌で感じ取れる。「想いを繋ぐ仕事」林業
――茂木さんが考える、林業の魅力をおしえてください。
茂木:長い年月をかけて樹にいろんな人の手が入って、今自分が切ってるんだなとか、自分も育ててるんだな っていうのが作業をしながら感じ取れるのが大きな魅力ですね。
「昔おじいさんが 植えたんだ」とかって、植えた人の気持ちを聞くときもありますし。
林業はやってる仕事のスケールが大きいですよねやっぱり。時間っていうスケールの大きさ、仕事をしながら歴史を感じられるというか。
木の生産って100年近くにもなりますし、自分が植えたものを伐ることってほとんどないから。地主さんの想いだったり地域の想いだったり、植えた人の想いを繋ぎながら仕事をする。
ちゃんと意識して仕事に向き合わなきゃなって思いますね。
過去もそうだし、未来に向けてもそうですね。次の世代に繋げていくっていう仕事。
あとはやっぱり土を踏んでるっていうのは一つ大きいかもしれないですね。
コンクリートじゃなくて、いろんな形の土を踏んでっていうのは、人間のあるべき姿の一つなのかなと思 いますし。
同じ 照明の明るさで1日中いるんじゃなくて、太陽の明るさでいるっていうのも人間として生物として生きてるって。人の歴史に立ち返っている感じですね。
――人の想いを繋ぐ、素敵な仕事ですよね。逆に大変なことはありますか?
茂木:大変なところは天候に左右されるところですね。
モチベーションにもつながってきますし。
特に埼玉は暑いので。空調服を着ていても限界がありますし、手元の飲み物もあったかくなっちゃうしで…。
結構体力を使うので、自分で体調見ながらやっていくのは慣れるまでは大変です。
気温とか天候とか、「自然が相手」という点はやはり対策に限界がある感じがしますね。
――茂木さんのこれまでの林業人生についてお伺いします。
林業で働くきっかけは何ですか?
茂木:具体的なきっかけ は特にないんですけど。
母方の実家の周りに山が多くて、祖父が木を切って色々やってくれてたんですよね。
ツリーハウスを作ったりとか。そういうのを見て、漠然と自然の中で働きたいなと思っていました。林業とか以前に、楽しそうだなという感じですね。
帰省した時に遊びに行ってたので、楽しい思い出とリンクされてて、よりインパクトが強かったんですよね。
――そこから林業系の進路に?
茂木:そうですね。中学生の時点でそう思っていたので、高校で専門系の学校に行きました。
そのあと現場実習が一番充実していた島根の農林大学校に進学しました。
最初は現場で働くことしか考えてなかったんですけど、森林施業プランナーという現場を作る方の仕事を授業で勉強して。
その時に現場作業員より森林施業プランナーとしてやりたいなって思いましたね。
それで2年次からはそのコースを選択しました。
島根の森林組合で実際にプランナーの人にちょっとついてった経験があって、それが今の方向性を決める要因となっています。
プランナーは営業もあるし、道の測量現場の設計など最初から最後まで携われるっていうのが良かったです。その経験は今の仕事にも活きてますね。
――就職活動はどのようにされましたか?
茂木:島根の大学だったけど、やっぱり地元埼玉に帰って就職しようと思って。
プランナー的な仕事ができるのは森林組合だと思ったので、求人募集してた森林組合に入りました。
緑の雇用制度を使って入社して、最初は事務系職員としての仕事をやりましたね。
そこで助成金・補助金を取りながら事業運営していくところを一通り全部経験して。
林業の稼ぎ方というか、林業経営みたいなものを理解しました。
そのあと前職でお世話になった会社(株式会社フォレスト萩原)に転職しました。
社長がかなり面倒見の良い人で、「(転職するなら)うち来いよ」って言ってくれて。
そこで現場作業をしっかりやりながら、プランナー的なこともやらせてもらったり。
いろんな経験を積みましたね。
――そこから今の会社を設立しようと思ったきっかけはありますか?
茂木:社長から「自分でやればもっと自由にできるからいいんじゃないか」というお話を頂いて。
出資金を出すので、やってみないかと。
元々40歳くらいまでには独立してみたいなって気持ちはあったんですよね。
だから10年早いけど、 いいチャンス かな、そこまで言ってもらえることも人生にないよなと思って。
――茂木さんのこれまでの仕事ぶりやお人柄があってこそでしょうね。
では今後の会社の展望・目標を教えてください。
茂木:林業を通じて地域をよくしていきたいですね。
東京に出ていかなくても働く場所がある、ちゃんと山に仕事があって、地元の人が地元で働ける。
そんな形で地域貢献ができて、山の管理も守れたら一番だと思います。
現状、林業は補助金頼りで利益を出しづらい仕組みなので、最終的には「林業で飯が食える」状態にしたい。林業で働きながら 結婚できて 子供が育てられるくらいにはできたらなと。
山を守るのもそうだけど、その人の暮らしもちゃんと守っていきたいですね。
――最後に、これから入社される方に向けてメッセージをお願いします。
茂木:自然が相手だからこそできる、一緒に働く方々の希望に沿った働き方を実現できるようにしたいと思っております。
ぜひ一緒に会社を作っていきましょう!