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2024.06.11 コラム

森林環境税とは?内容や仕組み、課題までわかりやすく解説!

「森林環境税って何?」
「何に使われる税金なの?」

2024年(令和6年)6月より、いよいよ始まった森林環境税の徴収。しかし、いったい何に使われる税金なのか、わからない方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は「森林環境税」について解説していきます。内容や仕組み、取扱い事例や課題まで解説していきます。最後まで読み進めて、内容を理解していきましょう。

1.森林環境税とは?

森林環境税とは、2024年から国内に住所のある個人に対して課税される国税のことです。

ここでは、以下の点から「森林環境税」について解説していきます。
・内容と仕組み
・目的
それぞれ見ていきましょう。

1.1.森林環境税の内容と仕組み

森林環境税は、国内に住所のある個人に対して課税される国税です。市町村において、個人住民税均等割とあわせて年1,000円/1人が賦課徴収されます。

対象者は6200万人、年間で約600億円の財源が確保できる予想です。

復興税の仕組みを転用し、市区町村で徴収された森林環境税は、国の交付税および譲与税配布金特別会計を経て「森林環境譲与税」として、都道府県または市区町村に譲与されます。

「森林環境譲与税」は、もともと市町村による森林整備の財源として、2019年度から前倒しで市町村と都道府県に対して譲与されていました

森林環境譲与税は、市区町村では、森林整備に必要な間伐や人材育成、担い手の確保・木材普及の促進・普及啓発など「森林整備及びその促進に関する費用」に使用します。
また、都道府県では「森林整備を実施する市町村の支援等に関する費用」に充てることとされています。

1.2.森林環境税の目的

森林環境税とは、2019年3月に成立した「森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律」に基づいて、以下の目的からできました。

  • 気候変動抑制の国際的な協定「パリ協定」で定めた温室効果ガス削減目標を達成するための財源確保
  • 災害防止などを図るための森林整備、また人材確保に必要な財源確保

森林の機能は、地球温暖化の防止だけでなく、水源の確保やさまざまな生物の維持など多くの役割を担っています。国土の3分の2が森林である日本は、豊かな自然を有し、私たちは大きな恩恵を受けているのです。

しかし現在の日本では、林業の担い手不足や所有者がわからず放置され、管理や整備ができていない森林の増加、自然災害など多くの課題を抱えています。

課題が多い中で「森林環境税」は、持続可能な社会を実現するために欠かせない森林保護・整備など重要な財源だと考えられています。

2.森林環境譲与税の活用事例5つ紹介

 森林環境譲与税の使い道は、市区町村では「森林整備及びその促進に関する費用」、都道府県では「森林整備を実施する市区町村の支援などに関する費用」とされています。
しかし、どのように活用するかは各自治体に委ねられており、都道府県・市町村においてインターネットなどを利用して、使い道を公表しなければなりません

  • 主な活用事例は以下の内容があります。
  • 森林経営管理制度に基づく市町村による間伐
  • 重要インフラ施設周辺の森林整備
  • 市内小学校の内装木質化
  • 上下流連携による森林整備
  • 人材の育成・確保

2022年(令和4年)には、総額500億円が譲与されています。ここからは、活用事例を林野庁の資料をもとに5つ紹介していきます。

2.1.秋田県由利本荘市(森林整備)

林野率75.4%、林業就業者数282人の秋田県由利本荘市では、民有林の約40%が私有林の人工林です。そのうちの60%が、適切な森林整備が進んでいません
その課題に対し、森林環境譲与税を活用し森林経営管理法に基づく森林整備を推進しています。
2022年(令和4年)は、4,206haの意向調査に取り組み、41haの保育間伐を実施しました。
その際に使用した、意向調査の704万5千円と保育間伐費の721万6千円は、全額森林環境譲与税が財源となっています。


2.2.鹿児島県さつま町(再造林支援)


林野率65.0%、林業従事者114人のさつま町では、木材需要の高まりから主伐が増加し、再造林は3割ほどになっています。
そのため町では、再造林による二酸化炭素吸収を促進するために、森林所有者への「直接交付」として令和4年に再造林意欲を喚起する事業が創設されました。
そして、16.73haの再造林に対して、交付金を森林所有者へ直接交付しました。

その際の事業費182万3千円は、全額森林環境譲与税が税源となっています。

2.3.岡山県美咲町(人材確保)


林野率74.1%、林業従事者38人の美咲町では、町内の林業従事者の減少や高齢化が大きな課題となっています。
林業への関心を深め基礎的な技術の習得や町内外からの林業従事者の確保、町内への移住・定住を目的として、1日林業体験や林業実務研修会を実施。

結果、令和4年度は合計16人が参加し、そのうち2人が町内の林業事業体へ就職しました。
その際の事業費117万9千円は、全額が森林環境譲与税の財源となっています。

2.4.愛知県名古屋市 × 長野県木祖村(自治体間の連携)


名古屋市と木祖村は、令和4年6月に以下の取組を目的に協定を締結しました。

  • 都市と地方が支え合い森林資源を活用する
  • 木祖村の森林整備や木材の利用促進を協力

この協定で、木祖村の3haを「名古屋市・木祖村交流の森」と設定し、名古屋市民が植栽や育樹などを通して水源の重要性や自然の豊かさを学べます。
令和4年度には、約1haの森林整備やカラマツなどの間伐材を利用した製品開発なども実施されました。
事業費896万3千円を、名古屋市では全額森林環境譲与の財源を活用しています。

2.5.佐賀県(都道府県による支援)

佐賀県内では、多くの市町で林業の担い手減少が問題となり、担い手の確保と育成が急務となっています。
令和4年度から「さが林業アカデミー」を開講し、就業セミナーや講習会を実施し、人材育成に取り組んでいます。
令和4年度は、6人が受講し、全員が県内の林業事業体へ就職しました。

参照:林野庁「令和4年度における森林環境譲与税の取組状況について」

各自治体に合った活動や内容をそれぞれ考えられ、活用されています。

3.森林環境税の課題

 

多くの自治体が譲与税を活用している中で、課題もあります。

今回の森林環境税が始まる前から、地方税として森林環境税を導入している自治体もあり、二重課税にならないかという点です
それぞれの財源を、どのように活用していくのか、差別化する必要がありそうです。

そして、税収配分も大きな課題です。
森林環境譲与税は、以下の按分率で配分されます。

  • 私有林人工林面積が55%
  • 人工が20%
  • 林業就業者数が25%

そのため、東京都のように森林面積は少ないけれど人口が多い自治体にも、多くの森林環境譲与税が分配されているのです。

たとえば、東京都の渋谷区では森林面積がゼロにもかかわらず、2019年から多くの資金が譲与されています。しかし、どのように使用するのかしっかり明記されていないため、基金として積み立てられ、活用されていないのが現状です。

また、人手不足により調査や取り組みまで手が回らず手付かずになっている場合もあります。

本来の目的で使われないという課題も発生しており、配分基準の見直しや人員配置も必要となりそうです。

4.まとめ

今回は「森林環境税」について解説していきました。みなさんが納めた税金は、森林整備、環境問題の取組への大事な資金ととして活用されます。
しかし、どのように活用されているのかを、しっかりと見守っていく必要がありそうです。

まずは、みなさんがお住まいの市区町村のホームページで、森林環境税や森林環境譲与税がどのように使われているのか、チェックしてみることからはじめてくださいね。

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