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2024.05.06 コラム

林業の伐木における事故事例3選|事故を防ぐ3つの安全対策も紹介

伐木の事故事例ってどんなものがあるの?
そもそも伐木って何……?
伐木作業中はどんなことに気をつければ良いの?

林業に興味があって、このような疑問や不安がある方もいるでしょう。

そこで今回は、林業の伐木作業中に起きた事故事例を3つ紹介ます。
前回の記事と同様に原因や対策まで詳しく紹介するので、林業への就職・転職を考えている方はぜひ参考にしてみてください。

  • 目次
      1. 林業の「伐木」とは?事故事例3選
        1.1【事例①】チェーンソーバーが挟まった樹木が倒れて作業者に激突した事故
        1.2【事例②】伐倒した樹木が同僚の頭部に直撃した事故
        1.3【事例③】伐倒した樹木が割け上がり、落下した樹幹が作業者に激突した事故
      2. 伐木作業時の事故を防ぐ3つの安全対策
        2.1作業前に安全確認をする
        2.2伐木作業の基本ルールを守る
        2.3チェーンソーの定期点検をおこなう
      3. まとめ

1. 林業の「伐木」とは?事故事例3選

林業の現場風景

林業の現場風景

伐木(ばつぼく)とは、一言でいうと「樹木を切り倒す作業」のことです。
同じ意味の「伐採(ばっさい)」のほうが聞き馴染みがあるかもしれませんが、資格名や講習などでは「伐木」がよく使われます。

また林業では、労働災害の約半数が「伐木作業中」に発生している状況です。

林業の作業種別死亡災害発生状況

林業の作業種別死亡災害発生状況

引用元:林野庁

樹木を切り倒す「伐木作業」にはどのような危険があるのか、以下で3つの事故事例を見ていきましょう。

1.1.【事例①】チェーンソーバーが挟まった樹木が倒れて作業者に激突した事故

1つ目は、切り口に挟まったチェーンソーバーを引き抜こうとして、木材グラップル機(倒れた木材を掴み移動する機械)を使用した際に起きた事故です。

木材グラップル機で樹木を押してチェーンソーバーを引き抜こうとしたところ、樹木が突然倒れて跳ね返り近くにいた作業者に激突しました。

伐採作業中の事故事例

伐採作業中の事故事例


引用元:林業・木材製造業労働災害防止協会

この事故の原因として考えられるのは次の5つです。

  • 伐倒木の芯腐れ(※1)が事前に確認されていなかった
  • 伐倒木の受け口(※2)が「伐根径の約半分」と深すぎた
  • くさび(※3)による安全な伐倒をしなかった
  • 木材グラップル機を主たる用途以外に使用した
  • 車両系木材伐出機械作業の「作業計画」を作成しなかった

(※1)芯腐れ……樹木の中心部分が腐朽していること
(※2)受け口……伐木作業をおこなう側から入れる切り込み
(※3)くさび……先端が尖った板状の道具

樹木の「芯腐れ」を事前に確認していれば、作業者は以下2つの行動を取らず、事故を免れていたでしょう。

  • 木材グラップル機で樹木を押す
  • 受け口を伐根直径の約半分の深さに切る

樹木が腐っているか・腐っていないかだけでも伐木作業の方法は変わるため、現場の状況は作業前に確認しておくことが大切です。

この事故を防止するためには、次の5つの安全対策が必要になります。

  • 樹木が芯腐れしていないか、事前にハンマーやチェーンソーを用いて確認する
  • 芯腐れを確認した場合は、受け口の深さを伐根直径の1/5〜1/6までとする
  • くさびを使用できる状態の樹木は、ノコ道を開きくさびにより伐倒する
  • 木材グラップル機(車両系木材伐出機械)を主たる用途以外に使用しない
  • 車両系木材伐出機械作業をおこなう際は、あらかじめ作業計画を作成・周知する

木材グラップル機のような車両系木材伐出機械作業をおこなう場合は、必ず事前に「作業計画」を作成し、作業員に周知しましょう。

1.2.【事例②】伐倒した樹木が同僚の頭部に直撃した事故

2つ目は、作業者が伐木作業をおこなった際、退避していなかった同僚の頭部に伐倒木が直撃した事故です。

作業者は追い口(伐倒木が倒れる側に入れる切り込み)切りに入る前に、近くで作業をしている同僚に伐倒する旨の声かけをしました。
同僚から応答があったため作業者は追い口切りを完了させましたが、同僚は退避をせずに作業を続行
作業者は大声で退避するよう叫びましたが間に合わず、伐倒木はそのまま同僚の頭部に直撃してしまいました。

伐採作業中の事故事例

伐採作業中の事故事例


引用元:林業・木材製造業労働災害防止協会

この事故の原因として考えられるのは次の2つです。

  • 作業者が合図を送っても同僚は退避せず作業を続けた
  • 追い口切りをする前に同僚が退避するのを確認しなかった

この事故は「同僚はもう退避しているだろう」「伐倒木はまだ倒れてこないだろう」という“認識のすれ違い”から発生しています。
お互いに相手の作業や行動にもう少し目を向けていれば、確実に防げていた事故だといえるでしょう。

この事故を防止するためには、次の2つの安全対策が必要です。

  • 伐倒合図は「他の作業者が危険区域外に退避したことを確認する」目的でおこなう
  • 伐木合図があった場合、他の作業員は素早く危険区域外に退避する

伐木合図は非常に重要な事柄でありながら、本質の理解が不足している傾向があります。
重篤な事故は「伐木作業者」より「他の作業者」の身に起こるケースが多いため、日常的に呼子や大声で合図するクセを身につけることが大切です。

1.3.【事例③】伐倒した樹木が割け上がり、落下した樹幹が作業者に激突した事故

3つ目は、台風で傾斜・湾曲した樹木が伐倒中に割け上がり、落下した樹幹が作業者に突撃した事故です。

作業者は、台風により傾斜・湾曲した樹木の被害木整理作業をおこなっていました。
すると伐倒木がいきなり追い口から割け上がり、先端部が地面に接触
湾曲が戻る反動で樹幹が落下し、退避が間に合わなかった作業者に突撃してしまいました。

伐採作業中の事故事例

伐採作業中の事故事例


引用元:林業・木材製造業労働災害防止協会

この事故の原因として考えられるのは次の4つです。

  • 傾斜・湾曲で重心が偏っている樹木の伐採方向を「重心方向」のままとした
  • 受け口の「水平切り」と「斜め切り」の切り終わり線が一致しなかった
  • ソーチェーン(チェーンソーの刃)が摩耗して切削スピードが遅くなっていた
  • 退避するのに好都合な場所での作業だったため、最悪の事態に備えた対処法策が取られていなかった

伐倒後の作業のしやすさを優先して、伐倒方向を「重心方向」そのままにしたことが事故の大きな原因となりました。
また受け口の切り込みすぎソーチェーンの摩耗など「これくらい大丈夫だろう」というわずかな気の緩みも、事故の大きな原因だと考えられます。

この事故を防止するためには、次の4つの安全対策が必要です。

  • 極端に湾曲している樹木の伐倒は、伐倒方向を「重心線から30度ほど左右」に変更して偏心(中心点のズレ)度合いを軽減する
  • 受け口の「水平切り」と「斜め切り」の切り終わり線を一致させる
  • 機械・器具類の定期点検をおこなう&作業状況に応じて随時点検する
  • 危険がともなう伐木作業は常に最悪の事態を想定し、事前に危険の対処方法を講じる

チェーンソーや刈払機などの切削能力は「作業効率」や「安全性」を大きく左右します。
とくにこの事故では、チェーンソーの切削スピードに問題がなければ、ここまで大きな事故は防げたかもしれません。

危険な伐木作業をおこなう際は「基本の安全対策」をきちんと実施して、自分や同僚の命を守りましょう

2.伐木作業時の事故を防ぐ3つの安全対策

林業で働いている人

伐木作業中に実践するべき3つの安全対策をまとめました。

  • 作業前に安全確認をする
  • 伐木作業の基本ルールを守る
  • チェーンソーの定期点検をおこなう

それぞれ詳しくみていきましょう。

2.1.作業前に安全確認をする

安全のため、伐木作業に入る前に次の6つを確認してください。

  • 伐木する木の上方を見て「つる絡み」や「枝絡み」の状態を確認する
  • 伐木する木の上方に「頭上に落下しそうな枯れ枝がないか」確認する
  • 受け口を切る前に「支障木を除去したか」確認する
  • 受け口を切る前に「樹高の2倍相当の範囲に他の作業者がいないか」確認する
  • 受け口を切る前に「退避場所」や「退避経路」を確認する
  • 避難場所は「伐倒方向の反対側の上方、かつ伐倒木から3m以上離れた場所」か確認する

つる絡み」や「枝絡み」があると伐倒方向を変える必要が出てくるため、伐木作業前に必ず確認しましょう。
また「退避場所」や「退避経路」を事前に確認しておくと、いざというときに迷わず退避できます。

2.2.伐木作業の基本ルールを守る

伐木作業の基本ルールは、次の8つです。

  • 受け口の深さは「伐根直径の1/4」とする
  • 大径木の受け口の深さは「伐根直径の1/3以上」とする
  • 受け口の下切りは「水平」に切り込む
  • 斜め切りは、下切り面に対し「30〜40度」の角度に切り込む
  • 追い口切りは、受け口の高さの下から「2/3ほどの位置」を水平に切り込む
  • 大径木や起し木などの伐倒は「くさびを2本以上」使用する
  • 伐木作業は、伐木方向に他の作業者がいないことを確認し「伐倒方向ヨシ!」と合図してからおこなう
  • 急傾斜地では、受け口を切った後に伐倒方向側にある「根株の角」を切り落とす

上記は、伐木作業を安全におこなうための基本ルールです。
細かいことが多いですが「緑の雇用」をはじめとした研修・講習で丁寧に教えてもらえるので、未経験者も安心してください

「緑の雇用」を活用できる事業体については、下記の記事で詳しく紹介しています。
関連記事▶︎「林業の会社選びはどうする?「緑の雇用」を活用できる認定林業事業体についても解説!

2.3.チェーンソーの定期点検をおこなう

チェーンソーのよる振動障害を防ぐために、定期的な点検整備を必ずおこないましょう。
常に最良の状態を保つためには、次の6つをおこなうことが大切です。

  • 適時ソーチェーンの目立てをおこなう
  • 予備のソーチェーンを作業場所に持参(適時交換)する
  • チェーンソーの操作時間は「1日2時間以内」とする
  • チェーンソーの一連操作時間は、長くても「10分以内」とする
  • 移動する際はチェーンソーのエンジンを止める
  • 高速の空回転は極力避けるようにする

上記を実践することで、今回紹介した事例③のような事故を防ぐ可能性が高まります。
「これくらい大丈夫」と思わず、伐木作業は常に万全の状態で取り組みましょう。

3.まとめ

今回は、伐木作業中に発生した事故事例を3つ紹介しました。
基本の安全対策をきちんと実行することで”まさかの事故”を防ぐ可能性が高まります。

なくてはならない林業の仕事が安全に続けられるように、これから就職・転職を考えている方はぜひ本記事を参考にして、作業に取り組んでみてください。

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