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2024.04.30 コラム

林業は労災が多いって本当?原因や対策を3つの事例とともに紹介

林業は労災が多いイメージだけど、実際はどうなの?
今までどんな事故が起きているの?

林業に興味はあるけど、そのような不安があり就職・転職に踏み出せない方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、実際に起きた林業の労災事例を交えながら、事故の詳しい原因や対策を紹介します。
ぜひ本記事を読んで「この事故はこの対策で防げる!」という知識を身につけて、林業の世界に飛び込む準備を始めてみてください。

  • 目次
      1. 林業の3つの労災事例&原因と対策
        1.1【事例①】伐倒木が作業者に激突する事故
        1.2【事例②】フォワーダが転落して丸太の下敷きになる事故
        1.3【事例③】蜂に刺されて重症アレルギーを起こした事故
      2. 林業の労災でよくある質問3つ
        2.1「林業で労災が多い原因はなに?」
        2.2「林業の労災は増えている?減っている?」
        2.3「林業の労災を減らす政府の対策は?」
      3. まとめ

1. 林業の3つの労災事例&原因と対策

林業の現場

ここからは、実際に起きた林業の労災事例を3つ紹介します。
事例とともに詳しい原因対策も紹介するので、ぜひ自分が実際に現場にいるイメージを持ちながらご覧ください。

1.1.【事例①】伐倒木が作業者に激突する事故

1つ目は、急傾斜地でセンノキ(高さ約22m)を伐採していたところ、伐倒木(切り倒した木)が斜面下方に滑り落ちてきて被害者に激突した事故です。
伐倒木は被災者の胸部に激突したのち、巻き込みながら斜面を約10m滑り落ちました。

林業の労災事例

林業の労災事例

引用元:林業・木材製造業労働災害防止協会

原因として考えられるのは次の3つです。

  • 受け口(※1)と追い口(※2)が同じ高さで切られていた
  • 仮置き材に伐倒木が乗り上げ、元口が跳ね上がった
  • 伐木作業においてリスクアセスメント(※3)を実施していなかった

(※1)受け口……伐木作業をおこなう側から挿入する切り込み
(※2)追い口……伐倒木が倒れる側に挿入する切り込み
(※3)リスクアセスメント……危険な作業のリスクを調査し、従業員が安全に働ける環境を整えること

受け口と追い口を同じ高さで切ったことで、追い口切りをおこなったあとに伐倒木がすぐに倒れ始めました。
被災者は避難する時間を取る間もなく、伐倒木に激突され約10mも滑り落ちてしまったのです。

この事故を防止するためには、次の4つの対策が必要になります。

  • 追い口は、受け口の高さの約3分の2の位置を切る
  • 仮置き材は、伐倒の邪魔にならない位置に移動しておく
  • 急斜面での伐倒方向は「斜め下」か「真横」を選ぶ
  • 困難がともなう伐木作業は、事前にリスクアセスメントを実施する

上記4つを実施することで、伐倒木が作業者に激突して滑り落ちるリスクを減らせるでしょう。

1.2.【事例②】フォワーダが転落して丸太の下敷きになる事故

2つ目は、スギ丸太の積み込み作業中にフォワーダ(積載式集材車両)がバランスを崩して、路肩から3mほど転落してしまった事故です。
被災者はフォワーダの運転席から投げ出され、崩れたスギ丸太の下敷きとなってしまいました。

林業の労災事例

林業の労災事例

引用元:林業・木材製造業労働災害防止協会

この事故で考えられる原因は次の4つです。

  • 被災者は「走行集材機械の運転業務特別教育」を受けていなかった
  • フォワーダがバランスを欠いた際に急激な旋回操作をおこなった
  • 作業位置が谷側の路肩に寄りすぎていた
  • フォワーダを扱う際の作業計画を作成していなかった

林業で重機を扱う際は、事故を起こさないように安全教育を受けることが大切です。この場合、きとんと作業者が安全教育を受けていれば、フォワーダがバランスを崩した際に適切な対応で事故を防げたかもしれません。

この事故を防止するために有効な対策は次の4つです。

  • 走行集材機械の運転業務特別教育」を受けた人を作業に就かせる
  • バランスを欠いても急激な旋回操作をおこなわない
  • 丸太の積み込みは谷側の路肩から離れた水平な場所でおこなう
  • 作業計画を作成して、指揮者に指揮をとらせる

林業では未経験者のための研修・講習を積極的におこなっているので、就職・転職を考えている方はぜひ受けておきましょう。
また林業就業支援講習については、下記の記事で詳しく紹介しています。興味がある方はぜひご覧ください。

関連記事▶︎「【転職に有利!】林業就業支援講習の内容と魅力を紹介します

1.3.【事例③】蜂に刺されて重症アレルギーを起こした事故

3つ目は、下刈り作業中に蜂に刺されて、重症アレルギーを起こしてしまった事故です。

林業の労災事例

林業の労災事例

引用元:林業・木材製造業労働災害防止協会

作業者は蜂に刺されたあと、市販薬を塗って作業を続けていました。
しかし、数時間後に再び蜂に刺され、同様に市販薬で処置をしましたが容体が急変。搬送先の病院で命を落としてしまいました。

この事故で考えられる原因は次の3つです。

  • 刈払機のエンジン音で蜂の威嚇音が聞こえなかった
  • 最初に蜂に刺された段階で病院を受診しなかった
  • 医師による自己注射器の処方を受けていなかった

刈払機のエンジン音で蜂の威嚇音が聞こえない」という状況は、山林で作業をする人なら誰にでも起こり得ることです。
しかしその後、すぐに病院へ行かず医師の診察を受けなかったことが、重症アレルギーを防げなかった原因の1つとなってしまいました。

この事故を防止するために有効な対策は次の4つです。

  • 防蜂網」や「防護手袋」を着用する
  • 蜂に刺されたらすぐに作業を中止し、医師の診察を受ける
  • あらかじめ医師から自己注射器の処方を受けておく
  • アナフィラキシー症状が出た際はすぐに自己注射器を使用する

蜂に刺されたあとの症状は、蜂アレルギーがあるか・ないかでも大きく変わります
よって山林に入る前には、研修や講習とあわせて必ず「蜂アレルギー」の検査を受けましょう。

そしてもし蜂に刺された場合は、自己注射器を携行してアレルギー症状の重症化を防ぐことが大切です。

2.林業の労災でよくある質問3つ

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山と作業員

ここからは、林業の労災でよくある質問を3つ紹介します。

  • 「林業で労災が多い原因はなに?」
  • 「林業の労災は増えている?減っている?」
  • 「林業の労災を減らす政府の対策は?」

それぞれの回答を見ていきましょう。

2.1.「林業で労災が多い原因はなに?」

林業で労災が多い原因は次の4つが考えられます。

  • 急斜面での作業が多い
  • 木が予想外の方向に倒れることがある
  • 肉体労働で疲れが溜まっている
  • 扱う機械が重い

今回紹介したように、木が倒れてくる方向は「受け口」と「追い口」の切り込みの位置である程度コントロールできます

また林業は肉体労働のイメージがありますが、近年は急速な機械化が実現。
作業時間も太陽が出ている時間帯だけなので、夕方以降や休日にしっかり休息すれば、疲労からくる労災を減らせるでしょう。

2.2.「林業の労災は増えている?減っている?」

林業の労災は、実はこの20年あまりで6割ほど減っています

林業における労働災害

引用元:林野庁

近年の減少傾向はやや横ばいですが、それでも労災件数は少しずつ減り続けています。
林業は危険な仕事」「林業はやめとけって言われた」と警戒している人も、今回紹介した労災の原因や対策をきちんと理解すれば、適切な方法で事故を未然に防ぐことができるはずです。

2.3.「林業の労災を減らす政府の対策は?」

林業の労災を減らせるように、政府は「労働災害防止対策」に取り組んでいます。
労働災害防止対策の具体的な呼びかけ(一部)は次のとおりです。

  • かかり木を正しく処理する
  • はしごや脚立を適切に使う
  • 防護衣を着用する
  • 蜂アレルギーの検査を受ける

たとえば「防護衣」を着用することで、初心者にありがちな「チェーンソーが原因の労災」から身を守れます。
また、あらかじめ蜂アレルギーの検査を受けておくことで、いざ刺されたときに冷静かつ適切な対処ができるでしょう。

3.まとめ

今回は、林業で実際に起きた労災事例を3つ紹介しました。
具体的な原因や対策を知ることで、林業で安全に働くイメージを以前より明確に持てるようになったのではないでしょうか?

もし今後「林業で働いてみたい」と考えている方は、本格的に山林に入る前にきちんと安全教育講習を受けておきましょう。
そのほか林業について疑問がある方は、RINDOの林業アドバイザーにお気軽にお問い合わせください。

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