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2024.04.02 コラム

日本の林業の現状と今後について|森林を未来につなげるための3つの対策とは

日本は国土の約70%を森林が占めている「森林大国」でありながら、世界有数の「木材輸入国」でもあるという矛盾を抱えています

国に多くの森林がありながら、日本はなぜ海外からの木材輸入に頼るのか?
日本の林業はどのような歴史を辿って「衰退した」と言われるようになったのか?

今回は、日本の林業の現状や課題、林野庁がおこなう3つの対策までをまるっと紹介します。

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  • 目次
      1. 日本の林業の歴史
        1.1戦後の拡大造林政策:人工林の拡大
        1.2同時期の燃料革命:加速する造林ブーム
        1.3木材輸入の自由化:国産木材の価格下落
      2. 日本の林業の現状と課題
        2.1深刻な後継者不足
        2.2あり余る森林資源
      3. 林業の未来に向けた今後の3つの対策
        3.1「緑の雇用」制度の実施
        3.2スマート林業の推進
        3.3木づかい運動の展開
      4. まとめ

1. 日本の林業の歴史

日本の林業の現場

日本の林業の現場

日本の林業は、江戸時代ごろから本格的に推進されてきました
現代より木材の需要が高い時代でしたが、やみくもに大量伐採しない「留山」という保全対策がおこなれたことで「伐採」→「植付け」→「育てる」→「伐採」のサイクルをうまく回せていたのです。

しかし、日本の森林整備のサイクルは、第二次世界大戦を境に崩れ始めました
日本の林業が戦後からどのような局面を迎えたのか、以下で詳しく紹介します。

1.1.戦後の拡大造林政策:人工林の拡大

昭和20〜30年代、日本は第二次世界大戦からの復興に力を入れるべく、多くの場所で木材の需要が高まっていました。
しかし次の2つの理由から、木材の供給が追いつかない状況に陥ってしまいます。

  • 戦時中の乱伐による森林の荒廃
  • 多発する自然災害

木材の不足は、必然的に木材価格の高騰へとつながりました。
そして政府は「拡大造林政策(※)」を施策し、各地域の造林を急務に実施。
(※「拡大造林政策」=天然林(主に広葉樹)を伐採した跡地を、人工林(主に針葉樹)に置き換えること)

拡大造林政策では、天然林の跡地に下記のような針葉樹を植え直しました。

  • スギ
  • ヒノキ
  • アカマツ
  • カラマツ

これらの針葉樹は比較的成長が早く、加工もしやすいことから経済的価値が高いとされる樹種です。
政府はこれらの針葉樹を「今後の日本の経済成長に大きく貢献する資源となる」と判断しました。
木材の大量確保に向けて、このころから強力に拡大造林政策を推し進めていったのです。

1.2.同時期の燃料革命:加速する造林ブーム

拡大造林政策と同じ時期に、日本は「燃料革命」を迎えます。
家庭の燃料が薪や木炭ではなく、次の3つに切り替わっていったのです。

  • 電気
  • ガス
  • 石油

薪や木炭はエネルギー源として時代に適さなくなったため、天然林を伐採して建築用材で使える人工林(スギやヒノキ)を植えました
人工林の価格は需要の増加とともに急騰し、ちまたでは「銀行に貯金をするよりスギやヒノキを植えた方が価値が高い」と言われるように。
いわゆる“造林ブーム”を巻き起こし、わずか15〜20年あまりで国有林・私有林問わず、針葉樹の造林が全国的に広まっていったのです。

1.3.木材輸入の自由化:国産木材の価格下落

木材の価格が高騰していた日本では、このころから外国産木材の輸入が本格化しました。
具体的には、昭和39年に木材の輸入が「全面自由化」となったのです

外国産木材は国産と比べて安価で手に入り、まとまった量を安定的に供給できる点が大きな強み。
安く大量に仕入れられる外国産木材の需要は年々高まり、輸入量も比例して増していきました。

さらにその後、変動相場制にともない円高が進むと、外国産木材がますます入手しやすい状況に。
これらのことが大きく影響して、昭和55年ごろをピークに国産木材の価格は下落し、日本の林業は経営が困難になってしまったのです。


引用元:林野庁

また昭和30年に約94%もあった木材自給率は、平成14年には約18%まで落ち込んでしまいます。
令和3年までの間に約41%まで回復したものの、日本の木材は半数以上を海外からの輸入に頼っている状況です


引用元:林野庁

このような状況にも関わらず、政府の拡大造林政策はそのまま推し進められていました。
平成8年にようやく政策終了となったものの、スギやヒノキなどの膨大な人工林と借金だけが、日本の山林に残されてしまったのです

また、このとき急激に植えられたスギやヒノキが、現代の国民病でもある「花粉症」に大きく影響しています。
林業と花粉症の関係性について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。

関連記事:「花粉症と林業の関係は?スギ林が多い理由や政府の花粉対策について

2.日本の林業の現状と課題

日本の林業で働く人

日本の林業で働く人

現代の日本の林業がどうなっているかというと、大きく次の2つの課題に直面しています。

  • 深刻な後継者不足
  • あり余る森林資源

それぞれどのような問題があるのか、以下で詳しく見ていきましょう。

2.1.深刻な後継者不足

林業は今、深刻な後継者不足に悩まされています
後継者不足の主な原因は次の4つです。

  • 若者の都市部進出
  • 林業従事者の高齢化
  • 林業経営者の意欲低下
  • 林業の衰退による地域の活力低下

間伐や主伐をおこなっても採算が取れない現状から、林業経営者の意欲が低下しています。
平成27年の意識調査によると、経営意欲が低い森林所有者の約70%が「主伐の意向はない」と回答しているほどです。


引用元:林野庁

林業の後継者不足は「山村問題」や「限界集落」にも影響するため、一刻も早い改善・解決が急務となっています。

林業の収入面に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
【林業の平均年収は?】事業体による違いはあるの?年収アップの可能性は?

2.2.あり余る森林資源

日本の山林は、林業の手入れが十分に行き届いていない地域が数多くあります
手入れされない森林は荒れ果て、木材資源や環境保護としての役割を果たせず、ただそこに“ある”だけの状態に……。
山林は林業の手が加わらないと、人々や環境のために力を発揮することができないのです。

実際に、森林放置が改善されないことで近年下記のような災害が起こっています。

  • 2014年……広島県で大規模な山崩れが発生(豪雨)
  • 2018年……北海道で大規模な土砂災害が発生(地震)
  • 2019年……千葉県で大規模停電が発生(台風)

また現在、拡大造林政策により植え付けられた人工林が主伐期(収穫期)を迎えていますが、林業の人手不足により60%以上の人工林が伐採されずそのまま残っている状況です


引用元:林野庁

日本の森林資源は有効に使いきれず、以前の造林ブームで植えられた多額の資金(山林資源)が山にあり余っています

3.林業の未来に向けた今後の3つの対策

日本の森林

日本の森林

日本の森林を未来につなげるためには「林業の担い手を増やす」ことや「国産木材の積極的な活用」が必要不可欠です。
それにともない、林野庁では下記3つの対策をおこなっています。

  • 「緑の雇用」制度の実施
  • スマート林業の推進
  • 木づかい運動の展開

それぞれどのような施策か、またどのような効果が期待できるのかを詳しく見ていきましょう。

3.1.「緑の雇用」制度の実施

木材自給率が過去最低の約18%まで落ち込んだ平成14年。
その翌年の平成15年より、林野庁では「緑の雇用」制度が開始されました

「緑の雇用」とは、林業の新規就業者を対象とした、仕事に必要な技術・知識を体系的に学んでもらうための研修制度のこと。
平成23年度からは全国で統一されたカリキュラムが用意されるようになり、安心した林業への就職やキャリアアップを後押ししています

「緑の雇用」について詳しく知りたい方は、ぜひ下記の記事をご覧ください。

関連記事:「▷関連記事「緑の雇用とは?内容やメリット、取れる資格などを徹底解説!」」

3.2.スマート林業の推進

スマート林業とは、最新のデジタル技術を活用した、既存人材の負担を減らせる取り組みや働き方のこと。
主に林業の効率化・省略化が目的で、全国12の地域で最新のデジタル(ICT)技術を下記のように活用しています。

  • ドローンで苗木を運搬する
  • レーザー計測で3D画像を生成する
  • 下刈りをラジコン機械でおこなう

スマート林業の推進により、高齢化が進む林業でも作業の効率化が実現
危険な作業をロボットがおこなうことで「労働安全の確保」にもつながり、労働災害発生件数も減少しています。

若者からの「林業って危なそう……」というイメージも払拭できるため、今後の新規雇用の増加が期待できる取り組みです。

3.3.木づかい運動の展開

林野庁では、国産木材の利用を促進するための運動として、平成17年度より「木づかい運動」を展開しています。
木づかい運動とは、木材の利用を通じて持続可能な社会へ変わるための、下記のような行動のことです。

  • 木を暮らしに取り入れる
  • 身の回りのものを木に変える
  • 建築物を木造・木質化する

近年では「ウッド・チェンジ」を合言葉として、林野庁は木づかい運動の情報発信やイベント開催などを積極的に実施。
令和3年には「ウッド・チェンジ協議会」が発足し、林業関係者や地方自治体などが木材利用を促進するための取り組みを推進しています

参考:政府広報オンライン

4.まとめ

「人手不足の解消」や「国産木材の活用推進」に取り組むことにより、日本の林業は少しずつ回復の兆しを見せています
高齢化や人手不足が深刻な林業ですが、実は若年層の就業者数は少しずつ増加しているのです。

今後も林野庁をはじめとするさまざまな機関が積極的に動き続けることで、日本の林業は以前のような活気を取り戻していくかもしてません。
その一端を担うのは、他の誰でもない「業に興味・関心がある若者」なのです。

林業に少しでも興味がある方は、ぜひ他のコラムにも目を通してみたり、RINDOの求人情報をチェックして「こんな会社があるんだ!」と知見を広めてみてください。

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