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2024.02.13 コラム

林業が抱える課題とは?解決策や取り組みを分かりやすく解説

最終更新日:

緑豊かな山々に覆われた日本は、国土の約7割を森林が占める森林国です。
古くから人々の暮らしと密接に関わってきた林業は、木材資源の供給だけでなく、水源涵養や土砂災害の防止など、多様な役割を担ってきました。
しかし近年、日本の林業は深刻な課題に直面しています。
具体的には、「林業従事者の減少と高齢化」「林業産出額の減少」「自然災害への対応」など、その問題は多岐にわたります。
一方でこのような課題に対する解決策として、様々な取り組みが行われています。

本記事では、日本の林業が抱える課題とその解決策や取り組みについて解説します。
豊かな森林を未来に繋げるために、一緒に林業について考えてみましょう!

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  • 目次
      1. 林業が抱える課題とは
         1.1林業産出額の減少
         1.2生産性の低さ
        1.3森林所有構造の複雑化
        1.4自然災害への対応
        1.5林業従事者の減少と高齢化
      2. 林業が抱える課題への取り組み・解決策
        2.1木材価格の安定化と木材需要の拡大
         2.2林業経営の規模拡大
        2.3適正な森林管理
        2.4自然災害への対応
        2.5政府や自治体による就職支援
      3. まとめ

1. 林業が抱える課題とは

画像提供:森庄銘木産業

日本の林業は、近年様々な課題に直面しています。その課題とは、具体的には以下のとおりです。

  • 林業産出額の減少
  • 生産性の低さ
  • 森林所有構造の複雑化
  • 自然災害への対応
  • 林業従事者の減少と高齢化
1.1. 林業算出額の減少

日本の林業産出額は、1980年の約1.2兆円をピークに、減少傾向にあります。
2022年には、4,831億円となり、ピーク時の約4割まで減少しています。

出典:林野庁ホームページ

林業産出額の減少の主な要因は、以下の2つ。

  • 木材価格の低下
  • 木材需要の低迷

国産の木材価格は1980年代以降、輸入木材の増加や木材加工技術の進歩などにより、長期的に低下しています。
実際、2020年の国産木材の平均価格は1立方メートルあたり約1万円であり、1990年(約2万円)と比べて半減しています。
また、木材の需要も、在宅や建築物の木造化率の低下や、木材製品の輸入増加などにより、低迷を続けてきました。

しかし近年は、国産材の生産量の増加や、木材自給率の上昇など、その活力を回復しつつあります。

1.2. 生産性の低さ

日本の林業の生産性は、諸外国と比べて低いことが問題となっています。
林業生産性の国際比較によると、日本の林業生産性は、欧米諸国やカナダなどの先進国と比べ、約3分の1程度とのこと。
林業生産性の低さの主な要因としては、以下の2つが挙げられます。

  • 小規模・零細な森林所有構造
  • 高齢化・後継者不足

日本の森林所有構造は、9割以上が1ha未満の小規模・零細な森林所有者によって占められています。    
そのため、経営規模が小さく、機械化や効率化が進みにくいので、生産性が落ちてしまいます。
また、林業従事者の高齢化・後継者不足も生産性の低さを招く原因です。

1.3. 森林所有構造の複雑化

日本の森林所有構造は、近年複雑化が進んでいます。
森林保有者の多くは、複数の森林を所有しており、その所有形態も、個人所有・共有所有・国有林・市町村有林など多岐にわたっています。
また、森林所有者の所在が、国内だけでなく海外にまで広がることも。
森林保有構造の複雑化は、森林管理の効率化や、森林資源の有効活用を阻害する要因となっています。

1.4. 自然災害への対応

近年、日本では、豪雨や台風などの自然災害が多発しています。
これらの自然災害は、林地を破壊し、木材資源を失わせることがあります。

出典:林野庁ホームページ

2022年の豪雨災害では、全国で8,929箇所、約10万haの森林が被害を受けました。
この被害により、木材生産の減少や、森林の機能低下などが懸念されています。

1.5. 林業従事者の減少と高齢化

近年、林業従事者は減少しており、高齢化も進んでいます。

出典:林野庁ホームページ

2020年の林業従事者数は約4万人であり、ピーク時の1980年代(約12万人)と比べて約3分の1にまで減少しています。
また、林業従事者の平均年齢は50歳を超えており、後継者不足が深刻化しています。

2. 林業が抱える課題への取り組み・解決策

ここでは林業が抱える問題を解決するための対策や、現在行われている取り組みを紹介します。

  • 木材価格の安定化と木材需要の拡大
  • 林業経営の規模拡大
  • 適正な森林管理
  • 自然災害への対応
  • 政府や自治体による就職支援
2.1. 木材価格の安定化と木材需要の拡大

林野庁が行ったアンケートによると、「身の回りの生活用品などに木材製品を取り入れたいか」という質問には、80%以上の人が「取り入れたい」と答えています。
また、「国産の木材と外国産の木材どちらを使用する方が良いと思うか」という問い対しては、60%以上の人が「国産」と答えています。

出典:林野庁ホームページ

こうして見ると、国産木材の需要は高いことが分かりますね。

木材価格の安定化や木材需要の拡大は、日本の林業の活性化に大きく繋がります。
実現させるには、以下の取り組みが重要です。

  •  国産材の生産量拡大
    国産材の生産量を増やすことで、輸入材への依存度を下げ、木材価格の変動を抑えることができます。
    そのためには、人工林の整備や、林業従事者の育成、林業機械の導入などが必要です。

  • 木材利用の促進
    木材利用を促進することで、木材需要の増加に繋がり、木材価格の安定化に貢献できます。
    具体的には、木造建築の普及を促進、木材加工技術の開発、木材利用に関する情報発信などがあげられます。

これらの取り組みを通じて、木材価格の安定化の実現・木材需要の拡大へとつながります。

2.2. 林業経営の規模拡大

林業経営の規模拡大への対策は以下の3つです。

  • 森林の多機能面の活用
    非常に多機能な面を持つ森林。
    たとえば「山崩れや洪水などの災害を防止する機能」「二酸化炭素を吸収し、地球温暖化防止に貢献する機能」「住宅用建材や家具、紙などの原材料となる機能」「行楽やスポーツの場を提供する機能」などが機能として挙げられます。
    適切な森林整備を行うことで、木材利用の拡大や、山村振興に貢献することができるでしょう。
    経営の規模を拡大するためには、多方面での有効活用が重要です。

  • 収入の多様化による経営安定
    小規模の林家は、農業、アウトドアのガイド等の立地や環境を活かした他の生業と兼業し、複合経営を行うことで、収入を安定できる可能性があります。
    また、森林のレクリエーション的利用等、森林を様々な形で活用し収入を安定させる経営体も存在します。
    新しい市場への進出や、木材以外の林産物の開発・販売も視野に入れることで、収益源の多角化を図ることが大切です。

  • 統合や共同組合の設立
    現在日本の林家は小規模で運営しているところが多いですが、林地を統合し、一つの大きな経営体として運営するのも一つの方法です。
    共同経営や協同組合を形成することで、リソースの共有や効率的な作業分担が可能になります。
2.3. 適正な森林管理

適正な森林管理を行うためにも、様々な取り組みが行われています。

  • 間伐
    間伐は、密集した木を適度に伐採することで、残った木の成長を促進し、森林の健全性を保つための作業です。
    間伐を行うことで、森林内に光が入りやすくなり、多様な樹種の生育が促進されます。

  • 森林構造の複雑化
    日本の森林の約4割は人工林です。
    人工林は、スギやヒノキなどの単一樹種で構成されており、病害虫や台風などのリスクに弱い傾向があります。
    そこで、森林の樹種を減らす、樹高を揃える、樹間距離を広げる、林床を整備するなどの方法で、森林構造を複雑化する取り組みが行われています。

また林野庁では、森林・林業政策の基本的な方向性を定めた計画を策定しています。
これらの計画により、日本の森林がより良い状態になるよう管理されています。

2.3. 自然災害への対応

自然災害への対策としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 防災林の整備
    急峻な地形には防災林を設け、土砂崩れを防ぐことや、定期的な林内整備を行い、強風に耐えられる木の構成を目指すことが重要です。

  • 森林整備
    間伐や枝打ちなどの森林整備を行うことで、森林の健全性を向上させ、風水害などのリスクに強い森林を作ることができます。

出典:林野庁ホームページ

これらの対策をすることで、自然災害が起こったときに被害を最小限に防ぐことができます。
また、災害発生時の迅速な情報収集と共有、そして復旧作業への迅速な対応も、森林を守るためには重要です。

2.3. 政府や自治体による就職支援

林業従事者の減少と高齢化を改善するために、現在政府や自治体でも様々な取り組みが行われています。
たとえば林野庁では、未経験の方が林業に参入しやすいように、「緑の雇用」制度を設けています。

【緑の雇用とは】

「緑の雇用」事業は、未経験者の方でも林業に就き、必要な技術を学んでもらうため、林業経営体に採用された人に対し、講習や研修を行うことでキャリアアップを支援するという制度です。研修年次に応じて研修の内容をステップアップさせ、さまざまな技能を身につけられるよう体系的な研修プログラムが用意されています。

緑の雇用制度を利用すれば、働きながら林業に必要な知識やスキルを身に着け、着実にキャリアアップすることが可能です。
このように、政府も林業参入者を増やすための支援を積極的に行っています。
▷緑の雇用について詳しく知りたい方は記「緑の雇用とは?内容やメリット、取れる資格などを徹底解説!」をご覧ください。

2.3. 新しい林業への取り組み

林業の生産性の低さを根本的に改善するために、政府では「新しい林業への取り組み」も行われています。
たとえば

  • 遠隔操作や自動化機械の導入
  • 低コスト化の実現
  • 労働負荷を削減する技術開発

などが挙げられます。

林業 課題出典:林野庁ホームページ

これらの取り組みにより、収支の大幅な黒字化を実現させ、林業の発展や活性化を目標としています。

以上が林業の課題に対する解決策や取り組みでした。
これらの対策を講じることで、林業の健全な発展と、森林資源の持続可能な利用の実現が期待されます。

3. まとめ

画像提供:株式会社樹工舎

今回は林業が抱える課題とその解決策について解説しました。
日本の林業が様々な課題を抱えているのは事実ですが、現在、これらの課題を解決するための取り組みも進められています。
一つ一つの課題に向き合えば、日本の林業は再び活力を取り戻し、持続可能な産業として発展していくことができるでしょう。
RINDOでは就業先の林業会社様の求人情報はもちろんのこと、このような林業に関わる情報も発信しています。
全国に林業の魅力を発信すること、また、林業業界の人材の流動性を向上させていくことを通じて、業界が抱える様々な課題の解決を目指し、日本の豊かな森林資源を次の世代へと受け継いでいきたいと考えています。
日本の林業の未来は、あなたの力を必要としています。
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