NEWS お知らせ・コラム
林業で働く人がいない理由とは?人手不足を解消する2つの取り組みを紹介
皆さんは、林業で働く人がいない理由を知っていますか?
林業は「危険な作業が多そう」「体力的にキツそう」というイメージから、就職・転職のハードルが高いと思われがちです。
しかし現在、林業における若年層の就業率は少しずつ増加傾向を示しています。
林業に興味がある方はぜひ本記事を読み進めて、林業で働く人がいない4つの理由や、人手不足の解消に向けた2つの取り組みについて知見を広めましょう。
- 目次
- 林業で働く人がいない4つの理由
1.1従業者の高齢化が進んでいる
1.2若手人材が定着しにくい
1.3新規雇用のハードルが高い
1.4既存人材の負担が多い- 若年者層の林業就業率は増加している
- 林業の人手不足を解消する2つの取り組み
3.1スマート林業の推進
3.2働き方の多様化- まとめ
林業の収入面について詳しく知りたい方はこちら▽
【林業の平均年収は?】事業体による違いはあるの?年収アップの可能性は?
1. 林業で働く人がいない4つの理由
総務省の国勢調査によると、林業の従業者数は長期的に減少傾向にあります。
具体的には、1980年の林業従業者は約14万6千人いたところ、2020年には約4万4千人まで減少しています。
林業から約70%もの人材が姿を消した理由として考えられるのは、次の4つです。
- 従業者の高齢化が進んでいる
- 若手人材が定着しにくい
- 新規雇用のハードルが高い
- 既存人材の負担が多い
それぞれにどのような問題があるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
1.1.従業者の高齢化が進んでいる
林業では、前々から「既存人材の高齢化」が課題として挙げられています。
たとえば令和2年の時点で、全産業の高齢化率が15%。
一方林業は、高齢化率が25%と他の産業と比べて高い水準にあります。
下記のグラフをご覧ください。
引用元:林野庁
林業は他の産業と比べて、高齢化率が10%も高い水準です。
既存人材の高齢化が進むと、体力面の問題でリタイアせざるを得ない林業従業者が増えていきます。
知識や経験が豊富なベテランがリタイアすることで、労働力のロスとともに従業者数が減少しているのです。
1.2.若手人材が定着しにくい
林業で働く人がいない理由として「若手人材が定着しにくい」というのも挙げられます。
若手が定着しにくい主な原因は次の3つです。
- 体力的にキツい
- 給料が安い
- 人間関係が難しい
3つとも「就職前後で体力面・金銭面・人間関係のイメージにギャップがあった」ことが原因として考えられます。
これに関しては、林業の実際の仕事を見学・体験することや、就職先の給料・人間関係をしっかり確認することでイメージギャップを解決できるでしょう。
たとえば全国森林組合連合会では、定期的に「森林の仕事ガイダンス」という林業未経験者向けの相談会・説明会をおこなっています。
誰でも無料で参加できるので、林業に興味がある方は積極的に活用して、就職前後のイメージギャップを埋めておくと安心です。
1.3.新規雇用のハードルが高い
林業は「危ない作業が多い」「体力的にキツそう」というイメージを持たれやすい職業です。
就職先を探している若者のなかには、林業に興味はあっても「事故にあったらどうしよう……」「自分に合わなかったらどうしよう……」と不安に思う方もいるでしょう。
たしかに、林業は安全な作業ばかりではありません。
チェーンソーのような重い機械を担ぎながら山の急斜面で作業をすることもありますし、実際に労働災害も年に数件発生しています。
しかし、下記のグラフをご覧ください。
引用元:林野庁
長期的にみて、実は林業の労働災害件数は減少傾向にあります。
また下記のグラフを見てみると、死亡災害が発生したうちの78%が「50歳以上」の林業従業者です。
引用元:林野庁
一方で、20〜30代の死亡災害数は、全体の20%ほど。
体力のある若年層の雇用が増えれば、2人に1人の割合で起きている60歳以上の労働災害を減らすことが期待できます。
林業では各種災害防止活動に力を入れている企業・団体が数多くあるため、今後の労働災害数をさらに減らしていくことも不可能ではありません。
1.4.既存人材の負担が多い
従業者が減れば、それだけ既存人材への負担が大きくなります。
林業では高齢化も進んでいるため、仕事の負担が増えるぶんリタイアを検討するベテランも増えていくでしょう。
ここまで読んでお気づきの方もいるかもしれませんが、「新規雇用のハードルが高い」→「若手人材が定着しにくい」→「従業者の高齢化が進んでいる」→「既存人材の負担が大きい」の4つは負のスパイラルになっています。
この負のスパイラルを止めるためには、活気ある若年層従業者の雇用が必要不可欠です。
2.若年者層の林業就業率は増加している
林業の従業者数は全体で見ると減少傾向にありますが、実は若年層(35歳未満)の就業者数は少しずつ上昇しています。
下記のグラフをご覧ください。
引用元:林野庁
全産業が減少傾向にあるのに対し、平成2年以降林業のおける若年者率は増加傾向にあります。
これは「労働力の高齢化に歯止めがかかりつつある」ことを意味しており、今後さらなる若年者就業率の上昇が期待できます。
また林業の新規就業者は、他産業からの転職者がほとんどです。
林業事業体が積極的に雇用を増やしていることに加え「健康的な暮らしがしたい」「自然の中で働きたい」という就職希望者の自然回帰志向の高まりが、転職理由として考えられています。
時代のニーズに合わせて、林業は今「雇用の受け皿」として大きな期待が寄せられている職業だと言えるでしょう。
林業に向いている人の特徴を知りたい方はこちら▽
林業に向いている人の特徴9選!よくある質問や一日の仕事サイクルも紹介
3.林業の人手不足を解消する2つの取り組み
林業の人手不足を解消する取り組みとして、林野庁および多くの林業事業体は次の2つを推進しています。
- スマート林業の推進
- 働き方の多様化
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3.1.スマート林業の推進
林業の人手不足の解決策として、林野庁では「スマート林業」を推進しています。
スマート林業とは、ロボットやAIなどのデジタル技術を活用して、林業の効率化・自動化を促進する取り組みのこと。
具体的には、林業ではデジタル(ICT)技術を下記のように活用をしています。
- ドローンを活用した森林調査
- ドローンによる苗木運搬
- レーザー計測による3D画像の生成
- ラジコン式下刈機械の導入
ICT技術を積極的に取り入れることで、一人当たりの生産性があがるだけでなく、労働安全の確保にもつながります。
危険な作業をロボットに代わりにやってもらえば、既存人材は他の安全な作業に集中できるでしょう。
スマート林業の推進で、近年林業業界の「なんか危なそう」「事故が多そう」というネガティブなイメージが払拭されつつあります。
ICT技術の導入で肉体的な負担も軽減されるため、心身ともに余裕を持ちながら自然のなかで心地よく仕事ができる人が、今後さらに増えていくでしょう。
3.2.働き方の多様化
林業の人手不足を解消する取り組みとして「働き方の多様化」も大きな後押しをしています。
近年新たに生まれたのが、マルチフォレスターとして林業に携わるライフスタイルです。
マルチフォレスターとは、簡単にいうと「複数の林業事業体で働きながら、他の業種と掛け持ちもできる働き方」のこと。
林業一本に絞って複数の事業体で林業を極めても良し、まったく別の業種(飲食店や観光業など)と掛け持ちをするのも良しの、その人だけの働き方を見つけられる働き方です。
マルチフォレスターは森林のなかで健康的に働きながら、自分の好きな仕事にも同時に就けます。
「未経験からいきなり林業の世界に飛び込むのはハードルが高い……!」と悩んでいる方でも、自分らしいライフスタイルを見つけるきっかけになるでしょう。
マルチフォレスターに関しては下記の記事で詳しく紹介しているので、気になる方はぜひあわせてご覧ください。
関連記事:「林業+αで働く「マルチフォレスター」とは?働き方や3つの魅力を紹介」
4.まとめ
本記事では林業で働く人がいない理由や、人手不足を解消する取り組みについて紹介しました。
高齢化や若手人材の定着のしにくさが課題として挙げられる林業ですが、スマート林業や働き方の多様化で「深刻な人材不足」が少しずつ解消されてきています。
なかでもマルチフォレスターのような働き方は、新規雇用のハードルをぐっと下げる試みです。
「林業に興味はあるけど、まだまだ他の仕事もやってみたい!」という方は、ぜひRINDOで多様な働き方を応援している事業体を探してみましょう。
「未経験だからどの事業体が自分に合っているかわからない……」という方は、RINDO公式LINEから林業アドバイザーにお気軽にご相談ください。