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【インタビュー】林業1年目|智頭町複業協同組合 中村さんの想い「森に詳しい人になりたい」
鳥取県智頭町に拠点を置く智頭町複業協同組合は、地域の活性化と持続可能な経済活動を推進することを理念に活動している組織です。協同組合のメンバーは、林業や接客業など、多岐にわたる分野での複業を通じて、地域の発展に貢献しています。今回は、協同組合に勤めて1年を迎える中村さんに、智頭町複業協同組合との出会いから現在の仕事内容、多様な職種に従事することで見えてきた林業の魅力、そして今後の展望について詳しくお話を伺いました。
仕事とプライベートどちらの時間も両立できる業界を探していた
――中村さんは林業を始めてどのくらいになりますか。
中村さん(以下、中村):林業歴は1年弱です。20歳で学校を卒業し、2年半ほど別の業界で働いた後、昨年の8月から智頭町複業協同組合へ入組しました。
――林業関係の学校に通われていたのですか。
中村:いえ、土木と建築の工業専門学校に通っていました。部活の活動で少しだけ間伐に触れる機会がありました。具体的には、間伐材を使って割り箸や小物入れを作るといった内容でした。当時は、建築や土木関係の設計や力学、デザインを中心に勉強していたので、林業の職種に就こうとは考えていなかったです(笑)。
――新卒ではどのような会社で働かれていたのですか。
中村:高速道路業界で施工管理業務に従事していました。仕事にやりがいは感じていましたが、残業が多くプライベートの時間を確保するのが難しかったため、長く勤めることを考え転職を決めました。
――仕事とプライベートの両立は大切ですね。転職活動はどのように行われたのですか。
中村:まずは大手の転職サイトで求人情報を見ていました。求人数は多かったのですが、自分の希望に合うものを見つけられずにいました。そんな時、たまたま鳥取市が開催していた移住の個別相談会にオンラインで参加しました。そこで現在勤めている、智頭町複業協同組合を紹介してもらいました。
――ご縁ですね!もともと転居ありきで求職活動をされていたのですか。
中村:そうですね。私は大阪出身ですが、新卒で働いた会社では福岡勤務だったので、転居への抵抗は低かったです。転職を機に、どこか別の地域に引っ越したいという思いがありました(笑)。
――転居への敷居が低いと選択肢が広がりますね。他の移住先も考えられていたのですか。
中村:移住先候補は広く検討していました。特に地元の大阪に戻ることも考えていましたね。結果的には、鳥取県への転居となりました。実は、私の祖父母が鳥取県の近郊地域に住んでおり、昔から何度も遊びに行っていたことが大きかったです。好きな飲食店が何店舗かあったり、土地勘があったことも移住を後押ししました。
――中村さんのルーツが関係したということですね。しかし実際、移住するとなると勇気がいるかと思いますが、智頭町複業協同組合で働くきっかけは何だったのですか。
中村:好奇心ですね。これまで日本海側の鳥取市には遊びに行っていましたが、南に位置する智頭町へは行ったことがなく、興味を持ちました。オンラインでの説明会後、実際に訪問する機会をいただけたので、智頭町の土地柄を知るために足を運びました。
訪問した際、林業に従事する同じ20代の方とお話しする機会をいただいたり、そもそも林業はどんなことをするのかというお話を聞くことができました。若手だけで取り組む現場も見させていただき、実際に自分が働くイメージを持つことができました。
住まい・仕事・人間関係すべての面でサポートが充実しており、移住の心配はなかった
――鳥取県への移住にあたり、住まいはどうされましたか。
中村:智頭町複業協同組合の方で手配していただきました。実は複業協同組合の持ち家があり、職員でシェアハウスする形になっています。光熱費込み且つ組合からの家賃補助も出るので、シェアハウスは15,000円程度で1ヶ月住むことができます。若手世代には大変ありがたい制度です。
――環境のサポートがあると移住のハードルも下がりますね!林業で使う作業服なども支給されますか。
中村:機材や防護服、ヘルメット、チェーンソーなど林業の仕事で必要な道具はすべて組合の方で用意してくださっています。ちなみに、機械のメンテナンスは各自でやっています。
転職にあたり、複数の事業者を見ましたが、住環境や作業環境などサポートが充実している点が、智頭町複業協同組合で働く決め手になりました。移住へのハードルが低かったのは、特に林業未経験者の私には助かりました。
――資格の取得に関してのサポートもありますか。
中村:あります。私も入組してから順次、資格を取得しています。林業だけでなく他の業界で活かせる資格も組合に相談して取得ができます。例えば、狩猟免許や電気工事士などです。
林業と他業界、複数の職を経験することで多面的に物事を考える機会が増えた
――智頭町複業協同組合は、やる気さえあれば働ける環境が整っていますね。組合となると一般企業とは異なる働き方かと思いますが、普段、中村さんはどのような仕事をされていますか。
中村:職員は、智頭町内の事業者を横断する働き方をしています。私の場合、平日は林業に従事することが多く、2〜3社の事業者をローテーションしています。私はまだ、重機を操縦することができないため、チェーンソーで伐倒する作業が多いです。特に智頭町は杉の町としても有名で、杉などの針葉樹の間伐が中心ですね。
土日は、飲食店など他業界の現場に行っています。冬場は灯油の需要が多いため、ガソリンスタンドで灯油の配達を担当することもあります。
――珍しい働き方ですね。就業先はどのように決められますか。
中村:個々の特性や組合の育成方針などを加味して、親方同士が話し合い就業先が決められています。毎月個々の就業先がシフト制で発表されます。
――就業先が複数ある中でも、特に林業は天候の影響を大きく受ける仕事かと思いますが、雨天時はどのようにされていますか。
中村:前日あるいは当日に雨が降っていた(降ると予測できる)時は、就業先の事業者と連絡を取り、現場で作業をするか確認をしています。現場に入らないことが決まると、雨でもできる薪割りなどの仕事をすることが多いです。
――林業に従事する際の一日のスケジュールを教えてください。
中村:大体はこんな流れで活動しています。
・6時半に起床
・7時半に自家用車or社用車で出発(通勤:20〜30分)
・8時に現場集合・打ち合わせ
・8時半から作業開始
・10時から小休憩(適宜)
・12時からお昼休憩(60分)
・15時から小休憩(適宜)
・16時半に作業終了・解散
・17時に帰宅
自宅から現場に直行することが多いです。自家用車で向かうのが難しい現場の時は、社用車で向かいます。現場によって帰宅時間は前後しますが、17時半には自宅に帰っていることが多く、プライベートの時間を十分確保できています。最近は、資格の勉強などに時間を当てています。夜10時には眠くなっている日々です(笑)。
――実際に林業で従事されてみて、ギャップは感じなかったですか。
中村:転職時に漠然と「森の中で働きたい」という思いがあったので、ギャップは感じていません。むしろ、自然と関われるので楽しいです。驚いた点としては、当初林業の仕事として持っていたイメージとは違い、繊細な作業が多かった点です。例えば、間伐する際に大胆に重機で伐倒するかと思いきや、数センチ単位で人の手で作業する箇所があったりします。それらをスピーディーにこなす先輩方の技術の高さにも日々驚いています。
林業は自己成長を日々実感できる仕事
――中村さんから見た林業の魅力や喜びを感じる瞬間は何ですか。
中村:まず、林業の魅力は大きく2つあります。一つ目は、ストレスなく従事できる点です。私はもともと、外で遊ぶのが好きな性格でしたが、前職はデスクワーク中心でした。林業は、緑に囲まれながら体を動かす仕事なので、性格に合っていると感じます。二つ目は、自己成長を感じやすい点です。林業は資格が必要な作業も多いため、技術面での成長を実感しやすいです。日々、出来ることが広がっているので自分の能力の成長を実感でき、とても楽しいです。
私の場合、林業と一口に言っても複数の就業先で従事しているので、様々な重機や仕事の段取りを見れるのは貴重な経験だと感じています。例えば、運搬する際の機械の大小が異なったり、伐倒するまでの段取りが事業者によって異なったりと、一つの事業者で従事した際には知ることが出来ない面を知れるのは面白いですね。複数の事業者を見ることで、自分に合う一番良いやり方を真似できます(笑)。一方で、就業先ごとのやり方を覚える必要があるのは、大変でもあります。時には、自身のこだわりと現場でのやり方との折り合いをつけることもあります。
また、特に興味深いのは、間伐する際の木の選び方です。事業者によって選定基準も異なるので、将来私はどんな基準で木を選びどんな山にしていきたいか、想像を巡らしています。今後、経験を重ねていき現場に最適な方法を提案出来るような人になりたいです。
――職場の雰囲気はどうですか。
中村:智頭町複業協同組合は、職員数8名、うち林業に携わっているのは5名で相談しやすい雰囲気があります。林業に携わりたくて入組した方が多く、職場環境の改善提案やちょっとした意見出しも盛んに行われます。今年は、暑い夏になりそうなので空調服の支給をお願いしてみます(笑)。職場に20〜30代が多いのも、意見を言いやすい理由かもしれません。皆んなでより良い環境を作っていきたいです。
――休日の取得など働き方について教えてください。
中村:週休2日制です。シフト制なので、休日の曜日は職員によってバラバラです。長期休暇や連休なども1ヶ月前に申請すれば、希望が通ります。面白い制度としては、「マルチフォレスターデー」といって、自己成長を促すために、勤務日扱いだけど自分の好きなことをして良い日が1ヶ月に2回取得できます。イベントに参加したり、機械のメンテナンスをしたり、複業したりと取得者が自由に過ごせる日です。マルチフォレスターデーは、週休2日とは別なので、実質1ヶ月に10日休むことができます。
――面白い制度ですね!智頭町複業協同組合で働く魅力について教えてください。
中村:やはり、林業と他業界を組み合わせた新しい働き方ですね。智頭町複業協同組合で働くことで、複数の職種を経験することができます。経済的な安定や個人のスキルアップの向上はもちろん、複数の就業先で多様な方たちと仕事をすることで、横の繋がりも増えます。例えば、現場で知り合った方から新しい情報をいただき、気になることをマルチフォレスターデーを用いて深めることが出来るので、個人のスキルの幅も広がります。楽しく、自身の興味があることにたくさん携わり、一番興味のあるものを探していくのにも最適です。
さまざまな経験を通して、森に詳しくなりたい!
――中村さんの今後の目標は何ですか。
中村:まずは、色んな経験を通して森に詳しくなりたいと考えています。林業のプロフェッショナルとして一人前になることもそうですし、多面的に森と関わるようにしています。例えば、仕事以外にセラピーガイドの講習を受けたり、図鑑を持って森を歩く、森ガイドなどにも参加しています。後々は、私の祖父が木工でおもちゃを作っていたので、木工関係の仕事もやってみたいです。
――素敵な目標ですね!最後に、新しく林業に参入する方や、これから入組される方へメッセージをお願いします。
中村:智頭町複業協同組合は、未経験者でも安心して働ける環境が整っています。林業は自然と向き合いながら働く魅力的な職業であり、複業を通じて多様な経験を積むことができます。田舎暮らしや森に詳しくなりたい人、自分の好きなことをやってみたい人はぜひ、智頭町に足を運んでみてください。きっと、新たな発見と挑戦が待っています。