NEWS お知らせ・コラム
【事故事例付き】チェーンソーによる林業の労災3選|防護具の選定ポイントも紹介
林業では「チェーンソー作業に関係する労災(労働災害)」がもっとも多く、死亡災害では約6割を占めています。
なかでも、下肢(股関節より下の部分)を切る事故は、伐木(樹木を切る)中の事故と同じくらい多発している状況です。
そこで今回は、近年発生したチェーンソーによる林業の事故事例3つや、労災の発生状況などを詳しく紹介します。
林業初心者だけでなく、業界に長く勤めている林業従事者もぜひ参考にして、改めて安全対策を徹底していきましょう。
”日本初の林業特化求人サイトRINDOで
ここにしかない転職活動を”
LINE登録者限定で就職お役立ち情報・新着求人情報などをいち早くお届け!
※質問やご相談もお気軽に公式LINEからお送りくださいね♪林業経験者が丁寧にお答えします!
- 目次
- チェーンソーによる林業の労災事例3つ
1.1【事故事例①】チェーンソーで切断した風倒木の根元が反発して、作業者に激突した事故
1.2【事故事例②】退避中に転倒し、チェーンソーで右膝を切傷した事故
1.3【事故事例③】退避中に転倒し、チェーンソーで大腿部を切断した死亡事故- チェーンソーにおける労災発生状況
2.1【起因物別】チェーンソーの労災発生率は第2位
2.2【事故の型別】切れ・こすれが第1位
2.3【傷病部位別】下肢の事故が大半を占める- チェーンソーの労災を防ぐ「保護具」の選定ポイント
3.1「防護ズボン」の選定ポイント
3.2「衣服」の選定ポイント
3.3「手袋」の選定ポイント
3.4「安全靴」の選定ポイント- まとめ
1. チェーンソーによる林業の労災事例3つ
まずは、近年発生したチェーンソーの労災事例を3つ紹介します。
「少しの気の緩みで重大な事故につながる」ことの教訓として、3つの事故事例すべてに目を通してみてください。
1.1【事故事例①】チェーンソーで切断した風倒木の根元が反発して、作業者に激突した事故
作業者は、かかり木(※1)状になっていた風倒木(※2)の根元をチェーンソーで切断していました。
すると突然、風倒木の根元が反発し、作業者に激突。その後、倒れてきた風倒木の下敷きになってしまいました。
引用元:林業木材製造業労働災害防止協会
この事故において、作業者は根むくれ(※3)で応力(※4)がかかり弓状となっている風倒木の「応力を弱める」必要がありました。
たとえば次の画像のような作業で応力を弱めれば、この事故は未然に防げたかもしれません。
引用元:林業木材製造業労働災害防止協会
「反動を抑えてから根元を切る」「複数のかかり木を順次外していく」などの安全対策を徹底して、このような事故を繰り返さないようにしましょう。
(※1)かかり木……倒れかかった木の先端が地上まで落ちてこない状態
(※2)風倒木……強風に吹き倒された木
(※3)根むくれ……根ごと引き抜かれて倒れている木
(※4)応力……変形に対抗する力
1.2【事故事例②】退避中に転倒し、チェーンソーで右膝を切傷した事故
作業者は、民有林(※1)の間伐作業(※2)をおこなっていました。
間伐対象のヒノキが10cm前後の小径木(※3)であったことから、作業者は伐倒方向の反対側にチェーンソーを当てて切り倒す「斜め切り」を実行。
すると突然、ヒノキの伐倒方向が変わり、作業者側に瞬時に倒れてきたのです。
作業者は急いで退避しましたが、途中でつまずき転倒。回転していたチェーンソーの刃先で、右膝を切傷してしまいました。
引用元:林業木材製造業労働災害防止協会
ヒノキが10cm前後の小径木であったことから、作業者は受け口(※4)や追い口(※5)を設けず「斜め切り」を実行。非正規で「禁じ手」とも呼ばれる斜め切りをおこなったことで、ヒノキが予想外の方向に倒れてしまったのです。
加えてチェーンソーは「アイドリング状態」で、常に回転する状態だったとのこと。
またチェーンソー作業用の防護衣が支給されていたにも関わらず、作業時は着用していなかったそうです。
伐倒が終わった時点でチェーンソーのエンジンを切っていれば、少なくとも切傷事故に発展することはなかったかもしれません。
(※1)民有林……国以外(個人・法人・市町村など)が所有する森林
(※2)間伐作業……森林を適正な密度に間引く作業
(※3)小径木……丸太の末口(根本から遠い細い方)が14cm未満の木
(※4)受け口……伐木作業をする側から入れる切り込み
(※5)追い口……伐倒木が倒れる側に入れる切り込み
1.3【事故事例③】退避中に転倒し、チェーンソーで大腿部を切断した死亡事故
作業者は、スギ立木(※1)の伐木作業をしていました。
その際、つる(※2)を残さずに受け口と追い口を切りすぎたことで、スギ立木が急に倒れ切迫。
作業者は慌てて退避するも転倒してしまい、持っていたチェーンソーで大腿部(※3)の動脈を切断してしまいました。
作業者は救急搬送されましたが、動脈切断による失血により命を落としています。
チェーンソー用の防護ズボンを着用していたものの、防護範囲外にチェーンソーの刃が当たってしまったのです。
受け口と追い口を適切に切りつるを残していれば、スギ立木は倒れなかったかもしれません。
また退避の際に慌てないことも、事故の発生を抑える大切な要因となります。
(※1)スギ立木……スギの集団
(※2)つる……受け口と追い口の高さのズレ
(※3)大腿部……股関節から膝までの部分
2.チェーンソーにおける労災発生状況
続いて「チェーンソーの事故ってどれくらい多いの?」「具体的にどんな怪我が多いの?」という疑問を解消しましょう。
2.1【起因物別】チェーンソーの労災発生率は第2位
平成26年のデータでは「林業における休業4日以上の死傷災害」として、チェーンソーによる労災が2番目に多いとされています。
引用元:厚生労働省
第1位の「立木等」の多くも、チェーンソー作業に関連するものが大半だと考えられています。
2.2【事故の型別】切れ・こすれが第1位
「林業における休業4日以上の死傷災害」としてもっとも多いのが、「切れ、こすれ」に関する事故です。
第2位は「激突され」ですが、こちらもチェーンソー作業に関連するものが多いと考えられています。
引用元:厚生労働省
第3位・第4位の「転倒」や「転落」は、「激突され」の半分ほどの発生率です。
チェーンソーによる事故を未然に防げれば、林業の労災発生率をぐっと減らせることがわかります。
2.3【傷病部位別】下肢の事故が大半を占める
チェーンソーが原因の労災では、ほとんどが「下肢(股関節より下の部分)」に怪我を負っています。
引用元:厚生労働省
チェーンソー作業において「下肢」を徹底的に守ることで、林業の労災発生率を今より格段に減らせるはずです。
3.チェーンソーの労災を防ぐ「保護具」の選定ポイント
最後に、労災を未然に防ぐための「保護具の選定ポイント」を紹介します。
保護具はソーチェーン(チェーンソーの刃)の接触から命を守る「最後の砦」なので、きちんと選定ポイントを押さえて選びましょう。
3.1「防護ズボン」の選定ポイント
「防護ズボン」は、次のポイントに留意して選びましょう。
「保護部材」が前面にあるものを選ぶ
防護ズボンの前面に「保護部材」があるものを選ぶことで、ソーチェーンによる重大な損傷を減らせます。
3.2「衣服」の選定ポイント
「衣服」は、次の3つのポイントに留意して選びましょう。
- 皮膚の露出を避ける
- 袖・裾締りの良いものを選ぶ
- 防湿性・透湿性に優れたものを選ぶ
ソーチェーンが直接肌に触れないようにすることで、命に関わる事故に発展する可能性を減らせます。
3.3「手袋」の選定ポイント
「手袋」は、次の3つのポイントに留意して選びましょう。
防振・防寒に役立つものを選ぶ
チェーンソーの振動を軽減・手がかじかまない工夫をするだけでも、チェーンソーの扱いやすさは大きく変わってきます。
3.4「安全靴」の選定ポイント
「安全靴」は、次の3つのポイントに留意して選びましょう。
「保護部材」がつま先・足の甲・足首・下腿の前側に入っているものを選ぶ
つま先・足の甲・足首・下腿の前側に「保護部材」があるものを選ぶことで、ソーチェーンによる重大な損傷を減らせます。
4.まとめ
今回は「チェーンソー作業における労災(労働災害)」について紹介しました。
チェーンソーで下肢(股関節より下の部分)を切る事故は多いですが、ポイントを押さえた防護具選び・着用をすれば、重大な事故に発展する可能性を減らせるでしょう。
今回紹介した事故事例のように「防護衣が支給されていたにも関わらず、作業時は着用していなかった」ということがないよう、作業の際は安全第一で、きちんと防護具を身につけて作業をおこなってください。