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2024.06.17 コラム

【事故事例付き】チェーンソーによる林業の労災3選|防護具の選定ポイントも紹介

林業では「チェーンソー作業に関係する労災(労働災害)」がもっとも多く、死亡災害では約6割を占めています。

なかでも、下肢(股関節より下の部分)を切る事故は、伐木(樹木を切る)中の事故と同じくらい多発している状況です。

そこで今回は、近年発生したチェーンソーによる林業の事故事例3つや、労災の発生状況などを詳しく紹介します。

林業初心者だけでなく、業界に長く勤めている林業従事者もぜひ参考にして、改めて安全対策を徹底していきましょう。

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  • 目次
      1. チェーンソーによる林業の労災事例3つ
        1.1【事故事例①】チェーンソーで切断した風倒木の根元が反発して、作業者に激突した事故
        1.2【事故事例②】退避中に転倒し、チェーンソーで右膝を切傷した事故
        1.3【事故事例③】退避中に転倒し、チェーンソーで大腿部を切断した死亡事故
      2. チェーンソーにおける労災発生状況
        2.1【起因物別】チェーンソーの労災発生率は第2位
        2.2【事故の型別】切れ・こすれが第1位
        2.3【傷病部位別】下肢の事故が大半を占める
      3. チェーンソーの労災を防ぐ「保護具」の選定ポイント
        3.1「防護ズボン」の選定ポイント
        3.2「衣服」の選定ポイント
        3.3「手袋」の選定ポイント
        3.4「安全靴」の選定ポイント
      4. まとめ

1. チェーンソーによる林業の労災事例3つ

林業 チェーンソー

林業で使うチェーンソー

まずは、近年発生したチェーンソーの労災事例を3つ紹介します。
少しの気の緩みで重大な事故につながる」ことの教訓として、3つの事故事例すべてに目を通してみてください。

1.1【事故事例①】チェーンソーで切断した風倒木の根元が反発して、作業者に激突した事故

作業者は、かかり木(※1)状になっていた風倒木(※2)の根元をチェーンソーで切断していました。

すると突然、風倒木の根元が反発し、作業者に激突。その後、倒れてきた風倒木の下敷きになってしまいました

林業 労災 事例

風倒木が作業者に激突した事故

引用元:林業木材製造業労働災害防止協会

この事故において、作業者は根むくれ(※3)で応力(※4)がかかり弓状となっている風倒木の「応力を弱める」必要がありました
たとえば次の画像のような作業で応力を弱めれば、この事故は未然に防げたかもしれません。

林業 労災 事例

風倒木の応力を弱める作業

引用元:林業木材製造業労働災害防止協会

反動を抑えてから根元を切る」「複数のかかり木を順次外していく」などの安全対策を徹底して、このような事故を繰り返さないようにしましょう。

(※1)かかり木……倒れかかった木の先端が地上まで落ちてこない状態
(※2)風倒木……強風に吹き倒された木
(※3)根むくれ……根ごと引き抜かれて倒れている木

(※4)応力……変形に対抗する力

1.2【事故事例②】退避中に転倒し、チェーンソーで右膝を切傷した事故

作業者は、民有林(※1)の間伐作業(※2)をおこなっていました。

間伐対象のヒノキが10cm前後の小径木(※3)であったことから、作業者は伐倒方向の反対側にチェーンソーを当てて切り倒す「斜め切り」を実行

すると突然、ヒノキの伐倒方向が変わり、作業者側に瞬時に倒れてきたのです。

作業者は急いで退避しましたが、途中でつまずき転倒。回転していたチェーンソーの刃先で、右膝を切傷してしまいました

林業 労災 事例

チェーンソーの刃先で右膝を切傷した事故

引用元:林業木材製造業労働災害防止協会

ヒノキが10cm前後の小径木であったことから、作業者は受け口(※4)や追い口(※5)を設けず「斜め切り」を実行。非正規で「禁じ手」とも呼ばれる斜め切りをおこなったことで、ヒノキが予想外の方向に倒れてしまったのです。

加えてチェーンソーは「アイドリング状態」で、常に回転する状態だったとのこと。
またチェーンソー作業用の防護衣が支給されていたにも関わらず、作業時は着用していなかったそうです。

伐倒が終わった時点でチェーンソーのエンジンを切っていれば、少なくとも切傷事故に発展することはなかったかもしれません。

(※1)民有林……国以外(個人・法人・市町村など)が所有する森林
(※2)間伐作業……森林を適正な密度に間引く作業
(※3)小径木……丸太の末口(根本から遠い細い方)が14cm未満の木
(※4)受け口……伐木作業をする側から入れる切り込み

(※5)追い口……伐倒木が倒れる側に入れる切り込み

1.3【事故事例③】退避中に転倒し、チェーンソーで大腿部を切断した死亡事故

作業者は、スギ立木(※1)の伐木作業をしていました。

その際、つる(※2)を残さずに受け口と追い口を切りすぎたことで、スギ立木が急に倒れ切迫。

作業者は慌てて退避するも転倒してしまい、持っていたチェーンソーで大腿部(※3)の動脈を切断してしまいました

林業 労災 事例

実際の伐根の状況

引用元:林業木材製造業労働災害防止協会

作業者は救急搬送されましたが、動脈切断による失血により命を落としています
チェーンソー用の防護ズボンを着用していたものの、防護範囲外にチェーンソーの刃が当たってしまったのです。

受け口と追い口を適切に切りつるを残していれば、スギ立木は倒れなかったかもしれません
また退避の際に慌てないことも、事故の発生を抑える大切な要因となります。

(※1)スギ立木……スギの集団
(※2)つる……受け口と追い口の高さのズレ
(※3)大腿部……股関節から膝までの部分

2.チェーンソーにおける労災発生状況

林業 チェーンソー

チェーンソーで作業する林業従事者

続いてチェーンソーの事故ってどれくらい多いの?」「具体的にどんな怪我が多いの?という疑問を解消しましょう。

2.1【起因物別】チェーンソーの労災発生率は第2位

平成26年のデータでは「林業における休業4日以上の死傷災害」として、チェーンソーによる労災が2番目に多いとされています。

林業 労災状況

林業の起因物別の労災状況

引用元:厚生労働省

第1位の「立木等」の多くも、チェーンソー作業に関連するものが大半だと考えられています。

2.2【事故の型別】切れ・こすれが第1位

「林業における休業4日以上の死傷災害」としてもっとも多いのが、「切れ、こすれ」に関する事故です。
第2位は「激突され」ですが、こちらもチェーンソー作業に関連するものが多いと考えられています。

林業 労災状況

林業の事故の型別の労災状況

引用元:厚生労働省

第3位・第4位の「転倒」や「転落」は、「激突され」の半分ほどの発生率です。
チェーンソーによる事故を未然に防げれば、林業の労災発生率をぐっと減らせることがわかります。

2.3【傷病部位別】下肢の事故が大半を占める

チェーンソーが原因の労災では、ほとんどが「下肢(股関節より下の部分)」に怪我を負っています

林業 労災状況

林業の起因物チェーンソーの傷病部位別の労災状況

引用元:厚生労働省

チェーンソー作業において「下肢」を徹底的に守ることで、林業の労災発生率を今より格段に減らせるはずです。

3.チェーンソーの労災を防ぐ「保護具」の選定ポイント

林業 防振手袋

林業で使う防振手袋

最後に、労災を未然に防ぐための「保護具の選定ポイント」を紹介します。
保護具はソーチェーン(チェーンソーの刃)の接触から命を守る「最後の砦」なので、きちんと選定ポイントを押さえて選びましょう。

3.1「防護ズボン」の選定ポイント

「防護ズボン」は、次のポイントに留意して選びましょう。

「保護部材」が前面にあるものを選ぶ

防護ズボンの前面に「保護部材」があるものを選ぶことで、ソーチェーンによる重大な損傷を減らせます。

3.2「衣服」の選定ポイント

「衣服」は、次の3つのポイントに留意して選びましょう。

  • 皮膚の露出を避ける
  • 袖・裾締りの良いものを選ぶ
  • 防湿性・透湿性に優れたものを選ぶ

ソーチェーンが直接肌に触れないようにすることで、命に関わる事故に発展する可能性を減らせます。

3.3「手袋」の選定ポイント

「手袋」は、次の3つのポイントに留意して選びましょう。

防振・防寒に役立つものを選ぶ

チェーンソーの振動を軽減・手がかじかまない工夫をするだけでも、チェーンソーの扱いやすさは大きく変わってきます。

3.4「安全靴」の選定ポイント

「安全靴」は、次の3つのポイントに留意して選びましょう。

「保護部材」がつま先・足の甲・足首・下腿の前側に入っているものを選ぶ

つま先・足の甲・足首・下腿の前側に「保護部材」があるものを選ぶことで、ソーチェーンによる重大な損傷を減らせます。

4.まとめ

今回は「チェーンソー作業における労災(労働災害)」について紹介しました。
チェーンソーで下肢(股関節より下の部分)を切る事故は多いですが、ポイントを押さえた防護具選び・着用をすれば、重大な事故に発展する可能性を減らせるでしょう。

今回紹介した事故事例のように防護衣が支給されていたにも関わらず、作業時は着用していなかったということがないよう、作業の際は安全第一で、きちんと防護具を身につけて作業をおこなってください。

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