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林業の労働災害はなぜ多い?事故の現状や対策・労働災害防止計画を一部紹介
「林業は危険」「労働災害が多い」というイメージを持つ方も多いでしょう。
実際に林業は、次のような理由から他業種と比べて労働災害が多い傾向があります。
- 扱う機械が重い
- 急斜面での作業が多い
- 木が予想外の方向に倒れることがある
- 肉体労働で疲労が多い
「林業に興味があるけど、自分も労働災害に合うリスクがあるのかな……?」と不安に思う方もいますよね。そのような方に向けて、今回は林業の労働災害の現状と対策を紹介します。
政府が労働者の安全・健康確保に向けて取り組んでいる「労働災害防止計画」についても紹介するので、林業に安全に取り組みたい就職希望者・初心者の方はぜひ最後までご覧ください。
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- 目次
- 林業の労働災害の現状
1.1林業の労働災害は約20年で6割ほど減っている
1.2林業の労働災害は平成30年から減少傾向が横ばい
1.3林業の死傷年千人率は全産業の約10倍- 林業の労働災害の特徴3つ
2.1伐木作業中の死亡災害が多い
2.2ベテラン従事者の労働災害が増えている
2.3死傷災害の約半数が小規模経営体- 林業の労働災害防止対策で死傷・死亡事故を改善
3.1防護衣を着用する
3.2かかり木を正しく処理する
3.3蜂アレルギーの検査を受ける
3.4はしごや脚立を適切に使う- まとめ
1. 林業の労働災害の現状
まずは林業の労働災害の「現状」を紹介します。大まかなトピックは次の3つです。
- 林業の労働災害は約20年で6割ほど減っている
- 林業の労働災害は平成28年から減少傾向が横ばい
- 林業の死傷年千人率は全産業の約10倍
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.1.林業の労働災害は約20年で6割ほど減っている
平成11年〜令和4年までの24年間で、林業の労働災害発生数は約6割ほど減少しています。
引用元:林野庁
林業は「従業者の高齢化」も課題として挙げられているため、このような状況のなかで労働災害発生数が減っているのは評価されるべき功績です。
ここで「どうして労働災害が減ったの?」と思う方もいるでしょう。その答えは「スマート林業」にあります。簡単に言うと、スマート林業の導入で次のようなことが可能になったのです。
- 作業道具の機械化が進んで体力を温存できるようになった
- 危険な作業をAIやロボットに任せて事故のリスクを減らした
「スマート林業の推進」や「体力のある若者の雇用」がさらに増えれば、林業の労働災害はさらに減少していくでしょう。
1.2.林業の労働災害は平成30年から減少傾向が横ばい
先ほどのグラフを見てわかるように、ここ4〜5年の労働災害減少傾向は横ばい。大きな減少は見られない状況です。
引用元:林野庁
ここからさらに林業の労働災害を減らしていくためには、本記事の最後で紹介する「労働災害防止対策」の徹底が必要になります。
1.3.林業の死傷年千人率は全産業の約10倍
林業の死傷年千人率は、全産業の約10倍と高い傾向です。
引用元:林野庁
死傷年千人率とは「労働者1,000人あたりに対し1年間で発生する死傷者数」のこと。
林業は全産業と比べて死傷年千人率が約10倍も高く、同じく危険なイメージを持たれることが多い建設業と比べても6倍弱高い傾向があります。
そこで政府は、労働災害防止対策を徹底して、10年後には今の半数まで死傷年千人率を減らすことを宣言。林業事業体にも、労働者が今より安全に作業できる指導の徹底が求められています。
2.林業の労働災害の特徴3つ
林業の労働災害には、次の3つの特徴があります。
- 伐木作業中の死亡災害が多い
- ベテラン従事者の労働災害が増えている
- 死傷災害の約半数が小規模経営体
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2.1.伐木作業中の死亡災害が多い
実は死亡災害の約7割が、木を切り倒す「伐木」作業中に発生しています。
引用元:林野庁
伐木作業中に切った木が自分や他の作業者に向かって倒れると、死傷・死亡事故につながります。伐木作業を安全に進めるためには、現場の状況に合わせて最適な手段を選ぶことが大切です。
そこで林業事業体には、新人研修を今以上に丁寧におこない、安全な作業を徹底できるよう環境づくりが求められています。「林業の充実した研修ってどこで受けられるの?」という方は、ぜひ林野庁が進めている「緑の雇用」制度を受けられる事業体を選びましょう。
緑の雇用に関しては「緑の雇用とは?内容やメリット、取れる資格などを徹底解説!」で詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
2.2.ベテラン従事者の労働災害が増えている
林業の労働災害は、年齢を問わず経験年数が少ないほど多い傾向です。
しかし次のグラフをよく見ると、経験年数が50〜60年のベテランも死亡災害にあうことがあります。
引用元:林野庁
死亡災害が多いのは「仕事に慣れていない新規従業者」と「仕事に慣れすぎた高齢従業者」の2パターンです。前者は山に入る前に研修や講習の徹底、後者は仕事への慣れをコントロールすることが求められます。
2.3.死傷災害の約半数が小規模経営体
死傷災害の約半数が、従業者数9人以下の「小規模経営体」から出ています。
引用元:林野庁
平均年千人率で見ても「1〜9人」と「10人〜」の経営体とでは大きな差があることがわかります。小規模経営体のなかには、大きな事業体から独立した木こりもいるでしょう。
一人親方を含む林業の小規模経営体は、今以上に安全講習や労働災害防止対策を徹底しておこなうことが重要です。
3.林業の労働災害防止対策で死傷・死亡事故を改善
林業の労働災害を軽減できるように、政府は「労働災害防止対策」を取り進めています。具体的な対策(一部)は次のとおりです。
- 防護衣を着用する
- かかり木を正しく処理する
- 蜂アレルギーの検査を受ける
- はしごや脚立を適切に使う
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3.1.防護衣を着用する
チェーンソーによる切創事故の防止に向けて、労働災害防止対策では「防護衣を着用するように」と促しています。防護衣の着用効果は次の2つです。
- 身体の近くでチェーンソーを構えられる
- チェーンソーを安全に操作できる姿勢を取れる
実はチェーンソーにより起きた労働災害は、その約6割が防護衣の防護範囲にあることがわかっています。
引用元:厚生労働省
切創事故はとくに初心者に多いため、もし林業に携わる場合は必ず防護衣を着用して自身の安全を守りましょう。
3.2.かかり木を正しく処理する
「かかり木」とは、伐採した木が他の木に引っかかって取れなくなる状態のことです。
引用元:厚生労働省
安全にかかり木作業をおこなうために、労働災害防止対策では次の4つの徹底を求めています。
- 事前踏査……森林の状況調査
- 確実な退避と合図……避難場所・合図を決める
- 同時伐採作業等の立ち入り禁止……他の作業者を立ち入らせない
- 適切な機械器具等の使用……適切な機械器具を使用する
かかり木が原因の死亡事故は今でも多いため、必ず正しい方法で処理しましょう。
3.3.蜂アレルギーの検査を受ける
労働災害防止対策では、蜂刺されの事故において次のように呼びかけています。
蜂刺されのおそれのある場所で作業する場合は、あらかじめ蜂アレルギーの検査又は診察を受け、重篤なアレルギー反応を起こすおそれのある作業者は、アドレナリンの自己注射器(エピペン)を携行するよう努めること
引用元:厚生労働省
刺す蜂のなかでも怖いのが「スズメバチ」と「アシナガバチ」です。夏〜秋に向けて危険がピークになり、巣に接近したり刺激を与えると攻撃してくることがあります。
引用元:厚生労働省
蜂の巣に近づかないことはもちろんですが、アレルギーがある場合は症状が重症化する危険があるため、必ず蜂アレルギー検査を受けてから山に入りましょう。
3.4.はしごや脚立を適切に使う
平成23年〜27年の間には、毎年30人前後がはしご等からの墜落・転落により命を落としています。
引用元:厚生労働省
それに伴い、労働災害防止対策でははしご・脚立を使う前に次の2つを検討するよう求めています。
- はしごや脚立の使用自体を避けられないか?
- 作業を可搬式作業台・手すり付き脚立などに変更できないか?
上記を検討してもはしごや脚立の使用が必要な場合は、必ずヘルメットを着用したうえで足場をしっかり固定して作業しましょう。
4.まとめ
林業はまだまだ「労働災害が少ない職業」とは言えません。
しかし、基本的な安全対策を守って作業すれば、重篤な死傷災害や死亡災害を減らしていけるはずです。
「林業=危険」なのではなく、少しの気の緩みが労働災害につながっています。経験の少ない新規従業者も、経験豊富なベテランも、今一度自身の作業環境を振り返りる必要があるでしょう。
就業前の研修・講習を徹底したい方は、今回紹介したような「緑の雇用」制度を受けられる事業体を選びましょう。事業体選びがよくわからない方は、林業専門アドバイザーが在籍しているRINDOまでお気軽にお問い合わせください。