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愛媛県の森林・林業の現状は?特徴、学べる場所を紹介

林業の世界に関心を持ち、「いつか森の仕事に携わってみたい」と考えている方にとって、愛媛県は魅力的な選択肢のひとつです。
県土の約71%を森林が占めており、その多くはスギやヒノキを中心とした人工林です。こうした豊かな森林資源は、木材の生産だけでなく、二酸化炭素の吸収や水源の保全といった多面的な役割を果たしています。
愛媛県と聞くと、みかんの産地というイメージが思い浮かぶ方も多いかもしれません。しかし同時に、長い歴史の中で林業を基盤として地域を支えてきた「森林県」としての一面も持っています。現在は人工林の多くが本格的な利用期を迎えており、持続可能な形で「伐って、使って、植える」という循環型の林業を推進する重要な時期に差し掛かっています。
この記事では、愛媛県の森林と林業の現状や特徴、直面している課題、さらに林業を学べる場や体験の機会についてご紹介します。
これから林業に踏み出そうと考えている方はもちろん、すでに林業に関わっている方にとっても役立つ内容となっています。最後までお読みいただき、愛媛の森がどのような学びや可能性を持っているのか、その一端をお伝えできれば幸いです。
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- 目次
1. 愛媛県の基本情報
まずは、愛媛県の基本情報について紹介します。
都道府県名 | 愛媛県 |
所在地 | 四国地方 |
人口 |
約126万人(2025年7月時点) |
面積 |
約5,676㎢ |
県庁所在地 |
松山市 |
森林面積 | 約40.1万ha |
森林率 | 約71% |
主な樹種 | ヒノキ、スギ |
四国地方の北西部に位置する愛媛県は、北は瀬戸内海、南は四国山地に接し、豊かな自然と温暖な気候に恵まれた地域です。県庁所在地は松山市で、四国最大の都市として経済・文化の中心を担っています。
愛媛県は大きく「東予・中予・南予」の3つの地域に分かれます。
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東予:製紙業を中心とした工業が盛んで、四国中央市などが代表的。
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中予:県都松山市を抱える都市圏で、商業やサービス業の拠点。
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南予:宇和海や足摺宇和海国立公園など豊かな自然が広がり、漁業や農林業が地域の基盤。
瀬戸内海に面する地域は比較的降水量が少なく温暖である一方、内陸や南部の山地は降雨も多く、夏と冬の寒暖差が大きいのが特徴です。この多様な気候条件は、柑橘類やお米、畜産物といった農業、そして森林資源の育成に大きな影響を与えています。
2. 愛媛県の森林の現状
次に、愛媛県の森林について、県全体と地域の特徴を見ていきます。
2.1.愛媛県全体の特徴
愛媛県の森林面積は約40.1万ヘクタールで、県土の約71%を占めています。そのうち約9割が民有林であり、人工林面積は約22万ヘクタールと、民有林の6割以上を占めています。これは全国的に見ても高い水準で、愛媛県が「人工林率の高い林業県」であることを示しています。
人工林の多くはスギとヒノキで構成されており、伐採や利用が可能な50年以上経過した森林が全体の7割を超えています。つまり、木材の生産に適した資源が豊富に存在しており、今まさに「伐って、使って、植える」という循環型の林業を実践する好機を迎えています。
さらに、愛媛県の森林は単に木材供給源としての役割にとどまらず、二酸化炭素吸収や水源涵養、土砂災害防止といった多面的な機能を発揮し、県民の暮らしを支えています。特に四国山地の森林は、県内外に水資源を供給する重要な役割を担っており、森林整備と林業振興の両立が求められています。
▶参考:愛媛県庁公式ホームページ
▶参考:四国森林管理局
2.2 地域による特徴
愛媛県の森林は、地形や気候、地域の産業構造によって特色が分かれています。大きく「東予」「中予」「南予」の3地域に分けて見ていきましょう。
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東予(四国中央市、新居浜市、西条市など)
瀬戸内海に面し、製紙業や工業が盛んな地域ですが、内陸部には森林が広がっています。特に石鎚山系の山岳地帯には天然林が多く残され、ブナやミズナラなど広葉樹も見られます。急峻な地形が多いため、水源涵養や防災機能としての森林の役割が強調される地域です。 -
中予(松山市、伊予市、久万高原町など)
県庁所在地の松山市を中心に都市機能が発達していますが、山間部に位置する久万高原町は「林業のまち」として知られています。スギやヒノキの人工林が多く、計画的に育成・伐採が行われてきました。特に久万材は品質の高さで評価され、建築用材として広く利用されています。 -
南予(大洲市、八幡浜市、西予市、宇和島市など)
温暖な気候と豊かな漁業資源で知られる地域ですが、森林面積も広く、古くから里山的な利用がされてきました。かつては薪炭林や広葉樹林が多く、現在でも広葉樹が比較的残されているのが特徴です。近年は森林バイオマスの活用や、地域資源を生かした林業・木材産業の振興に力を入れています。
このように、愛媛県全体としては人工林率の高い林業県である一方、地域ごとに森林の姿や利用のされ方が異なります。東予は水源林や天然林の保全、中予は人工林を活かした林業の展開、南予は里山や広葉樹利用の歴史と再生といった、それぞれの地域が持つ特色が、愛媛県林業の多様性を支えています。
3. 愛媛県の林業について
次に、愛媛県の林業を支える事業体と、そこで働く人々の現状を見ていきましょう。
3.1.林業経営体の数
愛媛県の林業は、中小規模の林家や森林組合、そして素材生産業者など多様な事業体によって支えられています。農林業センサス(2020年)によると、愛媛県にはおよそ2,000を超える林業経営体が存在しており、その内訳は以下のような特徴があります。
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林家(自営林業):県内に広がる民有林の多くを所有し、小規模に森林経営を行う。兼業農家が多く、自伐型林業として持続的に森を管理している例も見られる。
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森林組合:県内各地に設置され、森林所有者に代わって施業を行う役割を担う。集約化や効率的な施業を進める中心的存在。
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素材生産業者:大型機械を活用して伐採・搬出を担う事業体で、木材市場や製材工場へ原木を供給している。近年は機械化の進展により、労働生産性の向上が図られている。
このように、愛媛県の林業経営体は規模や形態がさまざまであり、所有と経営の分離が進む中で「担い手の集約化」と「効率的な施業体制の構築」が課題となっています。
さらに、県内の経営体の中で、国が実施する「緑の雇用」事業を利用できる認定事業体は68社が登録されています。愛媛県の認定事業体については、「愛媛県林業労働力確保支援センター」から一覧を確認してみてください。
また、「緑の雇用」について詳しく知りたい方は、「緑の雇用とは?どんな内容?メリットや取得できる資格まで詳しく紹介!」も参考にしてみてくださいね。
3.2.林業従事者の推移
愛媛県の林業従事者数は、全国と同様に長期的な減少傾向にあります。「愛媛県林業労働力確保支援センター」によると、2018年には1,000人を下回る水準となり、林業従事者の平均年齢も50歳となるなど、従事者の高齢化も進行しています。愛媛県においても、全国と同様に林業従事者の世代交代が喫緊の課題です。
一方で、国や県の支援制度、また地域の森林組合や民間企業による担い手育成の取り組みも進められています。
例えば、
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新規就業者向け研修制度:チェーンソーや高性能林業機械の操作技術、安全管理を学べる研修が整備されています。
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移住とセットの林業就業支援:久万高原町などでは移住者を対象にした支援制度や住宅の提供を行い、就業を後押ししています。
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女性や若者の参入:従来は男性中心だった現場に、女性やUターン人材が徐々に増えており、多様な担い手の確保が始まっています。
それでも現状では、労働環境の厳しさや収入面の不安から定着率が課題となっています。安全対策や労働時間の改善、収益性の向上が不可欠であり、林業の「持続可能な職業化」が問われています。
4.愛媛県で林業について学べる場所・支援先
愛媛県で林業に携わりたいと考える方にとって、移住後の生活基盤づくりや仕事探しには不安がつきものです。そのため県や市町、森林組合などが中心となり、安心して新たな一歩を踏み出せるように多様な支援制度や相談窓口が整備されています。
ここからは、愛媛県で林業へ従事しようとしている方向けの林業支援先について見ていきましょう。
4.1愛媛県林業労働力確保支援センター
愛媛県林業労働力確保支援センターは、「愛媛県内で森林を守る人材を募集している求人事業体」と「愛媛の森林で働きたい求職者」との無料職業紹介事業を行なっています。
ここでは、林業に関する求人情報の提供や就業相談を行っており、林業未経験の方でも安心してスタートできるようにサポートしています。また、職業訓練の案内や資格取得支援も行っているため、林業を“基礎から学びたい”という方におすすめです。
4.2.愛媛県林業研究センター
愛媛県林業研究センターは、豊かな森林資源を「伐って、使って、植えて」持続的に利用していくため、さまざまな取り組みを行っています。
ここでは、最新の林業技術や森林管理に関する研究成果を活かした研修・講習を受けることができます。また、木材利用や森林保全に関する研究も盛んで、現場で役立つ知識を習得できるのが特徴です。林業の現場で働きながらスキルアップを目指す方におすすめの機関です。
例えば、
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試験研究:花粉症対策のひとつとして、花粉を出さず、材質や成長も良いスギの優良系統を開発しています。
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愛媛大学と連携した教育:森林管理の現場の即戦力となる人材育成を目的とした「森林環境管理学サブコース」、社会人教育として森林資源を活用したビジネスで活躍できる多様な人材を養成する「森林環境管理学リカレントプログラム」に関する連絡調整などを実施しています。
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林業を担う技術者の養成:林業への新規就業を希望している方を対象に、「豊かな知識、確かな技術、高い安全意識」を備えた林業技術者の養成を行っています。研修コースは、フォレストワーカー養成コース、林業架線作業技術コース、高性能林業機械作業技術コース、指導者育成コースの4つがあり、段階的に知識や技術を習得できるように構成されています。
- 担い手や後継者への支援・普及:地域の林業をけん引する林業研究グループの活動を支援しています。また、林業事業体への経営指導や安全指導、高校生や大学生を中心としたインターンシップなどの後継者対策、研究成果の現場への移転などの普及活動を実施しています。
林業は自然を相手にする分、体力的な面や生活環境への適応が必要になる仕事ですが、愛媛県では行政・地域・事業体が一体となってサポートを提供しています。まずは相談窓口を活用し、自分に合った働き方や地域を見極めながら、安心して林業への一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
5.愛媛県の林業に関するよくある質問
最後に、愛媛県の林業に関するよくある質問をまとめました。就職・転職や移住のヒントにしてみてくださいね。
5.1.愛媛県の森林や林業にはどのような特徴がありますか?
愛媛県は県土の約71%を森林が占め、スギやヒノキを中心とした人工林と、ブナやシイなどの広葉樹を主体とする天然林が地域ごとに広がっています。温暖な気候と豊かな降水に恵まれた環境は、木材生産に適している一方で、流域の水源涵養や土砂災害防止など、森林が果たす多面的な機能も重要です。
近年では、人工林の多くが利用期を迎えており、計画的な伐採・再造林や間伐の推進が課題となっています。
また、製材や木質バイオマス利用といった産業的な取り組みに加え、森林セラピーや登山、キャンプなど観光資源としての活用も進められています。地域ごとに特色ある林業が展開されており、環境と経済の両立を目指した持続的な森林づくりが進められています。
5.2.愛媛県で林業の仕事を始めるにはどうすればいいですか?
愛媛県で林業の仕事を始めるためには、まず「情報収集」と「相談」からスタートするのが安心です。
県や市町村が運営する移住・就業支援窓口では、林業の基礎知識から地域ごとの求人状況まで幅広い情報を得ることができます。また、森林組合や民間の林業会社が実施する現場見学や短期体験プログラムに参加すれば、仕事の流れや雰囲気を直接体感でき、就業後のミスマッチを防ぐことにもつながります。
さらに、林業に必要な資格や技術を学べる「緑の雇用」研修制度を利用すれば、未経験者でも安心してキャリアを積み始められます。愛媛県は研修費用の一部をサポートしており、給与を受け取りながら実務経験を積める点が大きな魅力です。
最初の一歩としては、愛媛県林業研究センターや愛媛県林業労働力確保支援センター、林業求人専門サイト「RINDO」に相談し、自分に合った働き方や地域を検討するのがおすすめです。
実際に現地に足を運んで、移住希望地の暮らしや仕事を確かめることで、より具体的なキャリアプランが描けるでしょう。
5.3. 愛媛県で林業移住するには?
愛媛で林業移住をするには、まずは「林業の仕事情報」や「研修制度」を調べることから始めましょう。
愛媛県林業労働力確保支援センターでは、林業就業相談や体験研修を実施しており、移住前に実際の仕事や働き方をイメージすることができます。また、市町村や森林組合も新規就業者を積極的に受け入れているため、移住支援制度と合わせて確認すると安心です。
次に、暮らしの拠点選びも重要です。愛媛は温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、海沿いから山間部まで多様な地域があります。住まい探しや生活環境については「えひめ移住ネット」や「愛媛移住を検討している方へ|支援制度や人気エリア5選を紹介」などの情報サイトを活用すると便利です。
また、南宇和森林組合様では、愛南町内で働く林業作業員(正社員)を募集しています。伐採・搬出など幅広い林業作業に携わり、経験がなくても研修や実地で技術を習得できます。自然の中で体を動かす意欲があれば、安心して挑戦できる環境です。給与や福利厚生も整っており、愛南町の移住支援制度を活用すれば住宅や生活面でのサポートも受けられます。
南宇和森林組合様の求人に興味を持った方は、ぜひ求人詳細を確認してみてくださいね。

画像提供:南宇和森林組合
6.まとめ
今回は、愛媛県の森林や林業の現状、地域ごとの特徴や就業支援について見ていきました。
愛媛県は、温暖な気候と豊かな森林に恵まれ、林業に携わるには理想的な環境が整っています。森林組合や民間企業、さらには移住者を支援する制度も充実しており、未経験からでも林業の仕事に挑戦できる体制が整っているのが大きな魅力です。また、林業の仕事は単に木を伐るだけではなく、森を育て、地域を守り、次世代へとつなぐ責任ある役割でもあります。
愛媛県には、新しい暮らしと仕事を両立させられるフィールドがあります。自然と共に生き、地域に根ざした働き方を選びたいと思った方や、林業に少しでも興味を持った方は、ぜひ愛媛県で林業に挑戦してみてくださいね。
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