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2025.07.21 コラム

スマート林業の導入事例5選|効果やデメリットまでわかりやすく解説

スマート林業って、そもそも何?
実際の事例をみてみたい

このように考えている方に向けて、この記事ではスマート林業の実際の導入事例5選を下記の流れでご紹介します。

【この記事を読んでわかること】

  • スマート林業とは何か
  • 実際の導入事例5つ
  • メリット・デメリット
  • よくあるQ&A

スマート林業は、林業業界の深刻な課題である人手不足・効率の悪さ・危険性の高さをまとめて解決する“キーポイント”です。

林業の未来を明るく照らす「スマート林業」とは何か、この記事で基本を学んでいきましょう。

\林業は体力仕事ばかりではない!/
\スマート林業で“スマート”に働こう/
林業 求人
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  • 目次
      1. スマート林業の基礎知識
        1-1|スマート林業とは?
        1-2|スマート林業を支える高性能機械一覧
      2. スマート林業の導入事例5選
        2-1|遠隔操作フォワーダとグラップルで生産性が向上した事例
        2-2|ロージンググラップルで作業者の負担が軽減した事例
        2-3|架線式グラップルで安全性が向上した事例
        2-4|ドローンやラジコン式草刈り機で作業が機械化した事例
        2-5|大手企業「住友林業株式会社」のスマート林業導入事例
      3. スマート林業導入のメリット・デメリット
        3-1|スマート林業導入のメリット4つ
        3-2|スマート林業導入のデメリット4つ
      4. スマート林業の事例についてよくある質問
        4-1|スマート林業で補助金は使える?
        4-2|林業DXってなに?
        4-3|スマート林業の導入ステップは?
      5. まとめ

スマート林業の基礎知識

スマート林業とは

まずは「スマート林業とは何か」「スマート林業で使われている代表的な高性能機械」を簡単にご紹介します。

今の林業業界がどのように進化しているのか、スマート林業の基礎知識を身につけましょう。

スマート林業とは?

スマート林業とは、簡単にいうと「AI・ロボット・ICT(情報通信技術)などの最新技術を取り入れた、新しい林業の形」のこと。

ドローンや高性能林業機械などを活用して、業務の効率化コストの削減生産性の向上安全性の向上人手不足の解消などを目指す取り組みを指します。

スマート林業の具体例は次のとおり。

  • ドローンによる森林調査
  • 遠隔操作による作業の機械化
  • GPSを活用した効率的な作業計画の作成 など

最新の技術や機械を組み合わせて、林業が以前から抱えている課題の解決を目指す。それが、今注目されている“スマート林業”です。

関連記事:注目のスマート林業とは?代表的な5つの技術と導入のポイントを解説

スマート林業を支える高性能機械一覧

スマート林業の導入にあたって欠かせないのが、さまざまなタイプの「高性能林業機械」です。

ここで、実際の林業現場で使われている代表的な高性能林業機械7つの特徴をみてみましょう。

フェラーバンチャ
フェラーバンチャ
立木を切り倒し、そのまま掴んで運びやすい場所にまとめて置ける自走式機械。
チェーンソーに代わり、危険な伐倒作業を安全におこなえる。
ハーベスタ
ハーベスタ
伐倒・枝払い・玉切り・集積などの作業を1台でこなす自走式機械。
これまでチェーンソーでやっていた作業を機械化・自動化できる。
プロセッサ
プロセッサ
集材された木材の枝払い・測尺・玉切りを連続しておこなう自走式機械。
ハーベスタと連携して使うことが多い。
スキッダ
スキッダ
丸太の一端を持ち上げて、引きずりながら集積場所まで運べる自走式機械。
道が整っていない場所で使われることが多い。
フォワーダ
フォワーダ
伐採された木材をグラップルクレーンで荷台に積み、まとめて運ぶ自走式機械。
でこぼこした地面でもスムーズに運搬できる。
タワーヤーダ
タワーヤーダ
ワイヤーを張って、山の上から木材を運搬する機械。
急な斜面や高低差のある場所での作業に向いている。
スイングヤーダ
スイングヤーダ
ワイヤーを使った集材に加え、作業中に旋回ができる便利な集材機。
主索を使わない簡易索張方式で、山から木材を運ぶときに使われる。

画像引用元:林野庁「高性能林業機械とは」

これらの高性能林業機械に、ドローンやレーザー計測などの最新技術を組み合わせることで、実際の林業現場でより効率的&安全な作業が可能になります。

関連記事:【高性能林業機械】林業を支える重機の種類と資格を完全ガイド

スマート林業の導入事例5選

いよいよここからは、スマート林業を実際に導入している企業・事業体の事例を5つご紹介します。

それぞれで課題・取り組み・効果などが異なるため、スマート林業でどのようなアプローチができるのか参考にしてみましょう。

※事例①〜④は、林野庁「令和6年度先進的な林業機械を活用した作業システムの事例」を参考にしています。

①遠隔操作フォワーダとグラップルで生産性が向上した事例

まずご紹介するのは、遠隔操作フォワーダとグラップルを組み合わせて集材作業を効率化し、生産性の向上を実現したスマート林業の事例です。

事業体の概要、従来の課題、取り組みの流れ、スマート林業で得られた効果をみてみましょう。

事業体の概要 ・会社名:フォレストテクニック株式会社(静岡県浜松市)
・従業員数:3名
・年間素材生産量: 3,414m³
従来の課題 ・フォワーダに丸太を積む作業に人員が2人必要だった
・1人のときはフォワーダとグラップルを往復しなければならず、効率が悪かった
取り組みの流れ 株式会社諸岡製のフォワーダ「MST1000」に試作中の遠隔操作システムを導入

グラップルのオペレーターが機械に乗ったまま、リモコンでフォワーダを操作可能に

丸太を積む作業が1人でもできるようになった
スマート林業で得られた効果 人手の削減:これまで2人必要だった集材作業が1人で対応できるようになった
生産性の向上:機械の乗り換えが不要になり生産性がアップした
作業負担の軽減:作業者の移動が減り身体的な負担が少なくなった

フォレストテクニック株式会社は、今後の展望として「グラップルの後ろをフォワーダが自動でついてくるシステムの開発・導入」を検討中。

遠隔操作をより安全におこなうために、安全確保体制の整備も進める予定です。

②ロージンググラップルで作業者の負担が軽減した事例

2つ目は、ロージンググラップルを使って集材作業を効率化し、身体への負担軽減&人員1名の削減を実現したスマート林業の事例です。

事業体の概要、従来の課題、取り組みの流れ、スマート林業で得られた効果は次のとおり。

事業体の概要 ・会社名:伸和産業株式会社(島根県益田市)
・従業員数:47名
・年間素材生産量:54,000㎥
従来の課題 機械式集材機を使った集材作業に人員が3人必要だった
取り組みの流れ イワフジ工業製のロージンググラップルを導入(※架線式グラップル:BLG-16R、油圧式集材機:YR-302E)

遠隔操作により、3人での集材可能が2人で対応できるようになった
スマート林業で得られた効果 人手の削減:3人必要だった集材作業が2人で対応できるようになった
作業者の負担軽減:山中での移動が減り作業者の身体的な負担が減った
生産性の向上:集材作業の効率化が実現した

伸和産業株式会社は、今後の展望として「自動集材・造材が同時にできるマルチワークシステムの導入」を検討中。

ロージンググラップル操作の習熟もさらに進めていく予定です。

③架線式グラップルで安全性が向上した事例

3つ目は、架線式グラップルを導入して、急斜面地での集材作業を効率化&安全化を実現したスマート林業の事例です。

事業体の概要、従来の課題、取り組みの流れ、スマート林業で得られた効果は次のとおり。

事業体の概要 ・組織名: 公益社団法人徳島森林づくり推進機構(徳島県徳島市)
・直営作業班員: 15名
・年間素材生産量: 13,480m³
従来の課題 険しい急斜面での集材作業に3人1組の人員が必要だった
取り組みの流れ イワフジ工業製の架線式グラップルと油圧集材機を導入

グラップル搭載カメラとモニターを活用した遠隔操作が可能に

集材地から離れた安全な場所で遠隔操作ができるようになり、2人1組で集材作業が可能になった
スマート林業で得られた効果 人員の削減:3人必要だった作業が2人で対応できるようになった
安全性の向上:急斜面での事故リスクが大幅に減少した
生産性の向上:素材生産の生産性が22%向上した(令和5年度時点)

公益社団法人徳島森林づくり推進機構は、今後の展望として「架線式グラップルと油圧集材機のさらなる活用」や「作業員の操作技術の習熟&強化」などを目指しています。

この事例は、難しい地形でも安全かつ効率的に作業を進めるスマート林業のモデルケースの1つです。

④ドローンやラジコン式草刈り機で作業が機械化した事例

4つ目は、ドローンや多目的造林機械をフル活用して、造林作業の機械化を実現したスマート林業の事例です。

事業体の概要、従来の課題、取り組みの流れ、スマート林業で得られた効果をみてみましょう。

事業体の概要 ・組織名: 山口県農林総合技術センター(山口県防府市)
・共同研究者: 株式会社NTTドコモ、株式会社筑水キャニコム、株式会社コア
従来の課題 造林作業は人手に頼る部分が多く、人員&労力が必要だった
取り組みの流れ 地ごしらえの段階から、機械下刈りを想定した造林地を設計

ドローンによる空撮・GNSS測量・スマートグラスなどのICT技術をフル活用

多目的造林機械「山もっとモット」や、ラジコン式草刈り機(試作機)を使って作業を機械化

緩〜中傾斜地での作業に対応し、安全性と作業効率が大幅に向上
スマート林業で得られた効果 作業の省力化:地ごしらえ・植栽・下刈りの3工程で人工数を34~55%カット
作業の効率化:ICT技術と機械を組み合わせて効率的に作業できるようになった
安全性の向上:急傾斜での移動が減り事故のリスクが大幅に減った

山口県農林総合技術センターは、林業現場に求められている「作業の効率化」「安全性の向上」「人員の削減」を、スマート林業を導入することでまとめて実現。

今後の展望として「傾斜約30度までの県内人工林への導入促進と普及活動」にも取り組んでいます。

⑤大手企業「住友林業株式会社」のスマート林業導入事例

スマート林業 住友林業

最後に、大手企業「住友林業株式会社」のスマート林業導入事例をご紹介します。

住友林業が考える日本林業の課題や、解決に向けた5つの取り組みをみてみましょう。

住友林業が考える日本林業の課題 日本の林業は「山の地形が険しい」「持ち主がバラバラ」などの理由から機械化が遅れ、世界と比べて生産性が低い。
取り組み①
森林ICTプラットフォーム
「森林ICTプラットフォーム」は、地域の森林資源や所有者情報を一括で管理できるGISシステム。
市町村の施策立案や、林業事業体の施業計画作成に役立っている。
取り組み②
路網設計支援ソフト
「Forest Road Designer(FRD)」
「Forest Road Designer(FRD)」は、航空レーザーで計測した地形データをもとに、林道・作業道ルートを自動設計できるソフト。
現地での下見回数を減らし、低コストかつ効率的にルート設計ができる。
取り組み③
コンテナ苗木の生産
今後のまとまった主伐(木材生産を目的とした木の伐採)に備えて「コンテナ苗木」を生産。
全国6か所の施設で年間約190万本の苗木を生産し、1年を通して苗木を供給できる体制を整えている。
取り組み④
林業用苗木運搬ドローン
植林地まで苗木を運ぶ重労働な作業を省力化する「林業用苗木運搬ドローン」を開発。
運搬ルートを記憶させることができ、これまで80分かかっていた作業がわずか5分(※往復)でできるようになった。
取り組み⑤
ウインチアシスト型林業機械
「テザー」
「テザー」は、ワイヤーで重機を支えるウインチアシスト型林業機械。
傾斜地でも安全に重機が使えるようになり、重労働なチェーンソー作業に代わることで安全性&生産性が高まった。

参考:住友林業「住友林業のスマート林業」

これらのような取り組みにより、住友林業は日本の林業全体の活性化を目指しています。

関連記事:【日本の林業を支える企業特集】住友林業の取り組みを紹介

スマート林業導入のメリット・デメリット

スマート林業 メリット デメリット

スマート林業を導入するメリットはたくさんあり、実際に多くの林業会社が作業の機械化・自動化を進めています。

しかし、なかにはデメリットと呼べる側面も。具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのか、下記で詳しくみていきましょう。

スマート林業導入のメリット4つ

林業会社がスマート林業を導入すると、主に次の4つのメリットがあります。

  • 身体への負担が減る
  • 安全に作業できる
  • 人手不足をカバーできる
  • コストを削減できる

これまでの林業では、重い木を運んだり長時間の立ち作業があったりと、作業員の身体に大きな負担がかかっていました。

しかし、作業を機械化・自動化できるスマート林業なら、作業者の身体的な負担を大幅に軽減することが可能に。危険な作業を機械に代わりにやってもらうことで、より安全に作業できるようになります。

また、機械や技術を組み合わせることで、従来より少ない人数でこれまでと同じ作業が可能に。林業業界の課題である「人手不足問題」もカバーしやすくなり、人件費や道具代などのコストも長期的に抑えられます。

スマート林業導入のデメリット4つ

一方で、スマート林業には次のような4つのデメリットもあります。

  • 初期費用が高い
  • 技術の習得が難しい
  • 通信環境に左右される
  • データ管理の準備が必要

多くの林業会社にとってもっとも心配なのが「初期費用(導入費用)の高さ」です。高性能林業機械や最新技術はそれ自体がとても高価で、導入するだけでも多くの資金が必要になります。

また、技術の習得が難しい点もデメリットの1つです。これまでの作業に慣れ親しんでいる作業員にとって、新たな技術の習得には多くの時間と労力が必要になるでしょう。

山林は通信状況が不安定なため、場所によっては遠隔操作中に通信が不安定になることも。データの保存・分析・活用に必要な「データ管理システム」の構築も必要なため、それにふさわしい人材や追加コストの準備も必要です。

スマート林業の事例についてよくある質問

スマート林業 よくある質問

最後に、スマート林業の事例にまつわるよくある質問をご紹介します。

Q1. スマート林業で補助金は使える?

スマート林業を導入する際は、国や自治体の補助金を利用できる場合があります。林野庁の「森林整備事業」や、各自治体の「造林補助制度」などが有名です。

補助率や対象となる機械・設備は補助制度によって異なるため、スマート林業を導入する際は事前にチェックしておきましょう。

Q2. 林業DXってなに?

林業DX(林業デジタルトランスフォーメンション)とは、デジタル技術を活用して林業の業務プロセス・経営モデルを根本から変えていこうとする取り組みのことです。

ドローンやレーザ計測などの最新技術を活用して、林業における業務のデジタル化・効率化・最適化を目指す広範な概念を指します。スマート林業は、この林業DXの一環です。

Q3. スマート林業の導入ステップは?

スマート林業の導入は、主に次の5ステップでおこないます。

  1. 現状の課題を洗い出す
  2. 手軽なITツールを取り入れる
  3. 機械・ソフトを導入する
  4. 扱える人材を育てる
  5. 使う範囲を広げていく

現状の課題を洗い出したら、まずはそれを解決するための計画を立てましょう。いきなり高価な機械やソフトを購入するのではなく、位置情報共有アプリのようなITツール(無料版)から取り入れていくと、低リスクでスマート林業の第一歩を踏み出せます。

また、機械やソフトには補助金を利用したり、ほかの事業体とシェアしたりすると導入費を抑えられることも。まずは小さく始めて、少しずつ使う範囲を広げて業務を効率化していきましょう。

まとめ

スマート林業は、これまで林業が抱えていた「人手不足」「効率の悪さ」「危険性の高さ」などの課題を解決し、森林を守りながら無理なく続けられる林業を目指す革新的な取り組みです。日本中にスマート林業が浸透することで、世界に誇れる日本の美しい風景を維持することができます。

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